第49話 那覇ダンジョン奪還作戦③

「おい!草介、起きろ!」


 うるさいなぁ…この声は…隆二か?あれ…俺は確か…


 目を覚ますと見覚えのある建物の中にいた。周りには傷だらけの探索者や周辺に住んでいる一般人がいた。俺は、体を揺さぶっている隆二に声をかける。


「揺らすな。ちゃんと起きてるから。」


「よかった。無事だったか…」


「此処はギルドか?一体どういう状況だ?なんで俺は此処にいる?」


 俺はヘルワームと戦っていた筈だ。1体倒したのは覚えているが、気を失ったのかその後の事は何もわからない。今は情報が必要だ。


「お前の予想通り、此処はギルドの中だ。魔獣がダンジョンから出てからは避難所になっちまったがな。ギルドには探索者がいたから対応することが出来たが街の被害は重大だ。なんとか住人は避難させたが全員救えたかどうか…」


 なるほど…確かにギルドに探索者がいないなんて自体はありえない。その上、ギルド職員も元探索者を名乗る人物が数名いる為、この施設は守ることが出来たという感じか。


「お前はまた青薔薇あおばらの姫に助けられたんだ。ほら、あそこにいる。」


 隆二の指差す方向には白銀の長髪を靡かせる絶世の美女の姿があった。


 あれが、【青薔薇あおばらの姫】

 探索者の中でもトップランカーであり、俺を二度も助けてくれた人。


「そうか。また助けられたのか…今後はどうするつもりだ?このままギルドに閉じこもってても解決しないだろ。」


「ああ、どうやらこの事態は全国で同時に発生しているらしい。ギルド連盟につい先程情報が入ったんだが、博多ダンジョンが事態の収束に成功したらしい。この事態の元凶となる魔獣がいるのでそいつを倒せば残りは勝手にダンジョンへ帰るそうだ。」


 既に解決している県もあるのか。対応が早いな。


「その元凶となる魔獣ってのは何処にいるんだ?」


 一番肝心なのはそこだ。倒せばいいとはいえど、居場所がわからなければ対応出来ない。


「さあな。博多では巨大な蜘蛛型の魔獣だったらしいんだが、他の県ではその個体は確認されていないんだ。もしかしたら場所ごとに違うのかも知れない。」


 個体が違うだと?そんなの見つけようがないじゃないか。それでは情報がないのと一緒だ。


「安心しろ。何も情報がない訳じゃねえ。他の魔獣は元凶の魔獣から逃げるような形で移動している。魔獣の進行方向の逆へ向かえばそこにいるはずだ。」


「簡単に言うけどな。それって魔獣の群れに飛び込めって事だろ。しかもどれがその個体かわからないんじゃ、中心にいる魔獣は全部倒さなきゃいけないって事じゃないか。」


「そう言われてもな。それしか手段がねえんだ。今、この沖縄にいる探索者で一番強い青薔薇あおばらの姫を筆頭にグループを作っている。人数が揃い次第、作戦を開始する予定だ。」


 彼女に周りに探索者が集まっている。人数は10人ちょっと…これだけしか居ないのか。心許ないな。ここで待っていても仕方ないし、俺も参加しよう。


「わかった。俺もその作戦に参加する。待っていても意味ないしな。」


「お前がそう言ってくれるならありがたい。人数不足で困ってたんだ。無理だけはするなよ。」


 隆二の激励を受け、青薔薇あおばらの姫の元へと歩き出す。その途中、隆二に聞かなければいけないことを思い出した。


「そういえば、金城さんは此処に来てないか?連絡がつかないんだが…」


 ギルドに向かう前、彼女にも連絡したが、電話に出なかった。今の今まで折り返しもなかったので心配していたのだ。


「俺もあの子に電話したが繋がらなかった。だが、あの子が住んでる方向は此処から離れてるし、無事だと思う。今は事態を解決する事だけを考えろ。それがあの子を救う事に繋がる。」


 隆二の言う事も一理ある。こんな状況で探しても見つかる訳はない。先に元凶を退治した方が手っ取り早い。


「……わかったよ。」


 心配だが今は事態を解決する方が先決だ。


 金城さん……無事でいてくれ。


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