第48話 那覇ダンジョン奪還作戦②
ヘルワーム…赤黒い巨大な体をしたミミズ型の魔獣。体の大半は常に地中に潜っており、いつでも地中に逃げ込めるようにしている。
「まずは小手調べだな。」
【
これで後は時間を稼ぐだけ。勝手にやられてくれるはずだ。ただし…こいつは毒系統の魔獣でなければだが…
ヘルワームが口を膨らませずに何かを吐き出す。慌てて回避すると先ほどまで草介が居た場所は溶けていた。
「やっぱり毒使いじゃねえか。相性最悪だな。」
見た目から予想はしていたが、案の定毒を使う魔獣だったか…格上への唯一の対抗手段、毒での状態異常ダメージという手段が取れなくなってしまった。
「まあ、やれるだけやってみますか。」
動き自体はそこまで早くない。近づくと攻撃を食らう危険性もあるが、奴を倒すにはそれしかない。
ヘルワームの攻撃を掻い潜り、接近する。隙を狙って刀を振り抜くが、液状の何かに護られており、刃がヘルワームを引き裂くさくことはなかった。
これは——体液?ぬるぬるしてて刃が滑りやがる。これじゃあ刀は通じない。
「ハハ、俺じゃこいつに勝てないじゃん。」
毒も通じない。刀も通じない。最後の手段は【
あいつらが逃げ切る時間くらい稼いでやるかな。
それからは一方的だった。ヘルワームが放つ毒液を回避しながら、距離を取るが引き離すことが出来ない。次第に動き回ったことで飛び散ったヘルワームの体液に足を取られ、転倒してしまう。
——しまっ———
足を取られた次の瞬間、ヘルワームの突進が草介の体に直撃する。草介は近くの建物へ弾き飛ばされてしまう。
やられた。完全に骨を数本やっている。体中血塗れだし、ここまでかな…
目を開けるとこちらに向かって飛んでくる毒液が見える。このまま動けなければ直撃だ。
「へへへ…どうせ死ぬなら試してみるか。」
大地を溶かすほどの毒液。そんなものを受けて人間が無事でいられる訳がない。そう思っていたから今まで実行しなかった。だが、俺には【毒耐性Ⅹ】がある。もしかしたら耐え切れるかも知れない。
放たれた毒液へと手を伸ばし、その身で受け止める。その瞬間、【
「ほら、お返しだ。」
ヘルワームの毒と草介の毒が完璧に混ぜ合わさり、矢のような形状に変わる。
毒の矢はヘルワームへと跳ね返り、その頭を貫いた。
「なんとか…倒せたな。」
毒を受け止めた右手の鎧は溶けてなくなっており、皮膚も火傷の跡の様に爛れている。
そんな満身創痍の状態ながらも、なんとかヘルワームに勝利することが出来た。そう思っていた。
地面がひび割れ、新たに2匹のヘルワームが姿を表す。
「ハハ、流石に無理だわ。」
諦め、眼を閉じかけたその時、銀色の髪を靡かせた女性が視界に入る。
「よく頑張ったね。そこで休んでていいよ〜」
誰だ…俺を助けに来てくれたのか…寒いなぁ…もう、意識が…
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