第43話 優しさは人それぞれ

「そうですか。サラマンドラが…」


「うん。この場所がバレてる訳じゃないから襲ってくる事はないと思うけど時間が経てば何処かへ行くかも知れない。丁度クエスト達成条件の10体揃ってるし、俺はここで倒そうと思ってる。」


 ここで倒して仕舞えばかなりの時間短縮になる。後は適当に狩りをして素材を売ってもいいし、別のクエストを受け戻って来てもいい。お互いに金が欲しい身。早く終えるに越した事はない。


「わかりました。案内して下さい。」


 ふらふらの状態で立ちあがろうとする。まだ回復しきれてない様子だ。これでは魔法の一つも使えないだろう。


「言っとくけど金城さんを戦わせる気はないよ。サラマンドラは俺一人でやる。レッドスライムの時は任せっきりになっちゃったからね。今度は俺の番だよ。」


 金城さんはその性格ゆえ、自分がどんなに苦しい状況でも他人を助けようとする。だが、いざ自分がキツくなっても他人を頼る事は出来ない。人が良いといえば聞こえはいいが、そんな性格ではいつか誰かに利用されてしまう。俺とパーティーを組んで行く中で少しずつ他人に頼ることなどを覚えて欲しいものだ。


 有無を言わせぬ態度で、彼女の方を振り返ることもなくサラマンドラのいる方へ歩いていく。


 自分がキツい時は仲間に任せる。これもパーティーを組む上で重要な事だ。


 サラマンドラのいた地点へ戻って来る。先程と変わらずサラマンドラはその場をウロウロしていた。


 俺に気付いてる様子はまるでない。【隠密】のお陰かな。効果が実感しにくいスキルだが、役に立っているのならまあいい。


 隠密を発動したまま、離れている個体に狙いをつける。


 背後からの一撃で終わらせる。他の奴らに気付かれないうちに数を減らすのが多対一の戦闘における秘訣だ。


 背後に迫るが今だに気付いた様子はない。

 首を断ち切るため、刀を振るう。


 ——硬い。鎧の素材に必要とか書いてあっただけはある。首を両断するつもりだったのに刀が半分くらいまでしか通らなかった。倒せはしたが刀ではいつかミスしてしまいそうだ。


 異変を感じ取ったのかサラマンドラの動きが変わった。まだ見つかりはしてないが警戒されてしまった。


 こうなってしまったらスピード勝負だ。速やかに倒して行くしかない。こういう耐久力が高い魔獣には状態異常だ。【猛毒ヴェノム】で一撃入れたら後は身を隠してお終いだ。


猛毒ヴェノム】を発動すると足元の大地から毒液が溢れ出て来る。


 毒の量が多くなってる。これを全部自在に操れるのか。思ってたよりいいスキルだ。これならわざわざ近付く必要もない。


 毒の波がサラマンドラを襲う。サラマンドラは避ける事も叶わず全身に毒液を浴びた。


「じゃ、俺はこれで。」


 敏捷力を活かし颯爽とその場を去る。

 追って来る足音が聞こえるが、サラマンドラは足が遅いので追いつくことが出来ない。

 俺はそのまま距離を引き離し、金城さんの元へ戻った。


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