第23話 図体デカい奴のパンチ力は半端ない

 俺が今持ってるスキルで奴に有効なもの…それは【爆破ボム】だ。このスキルならトロールにもダメージを与えられる可能性がある。


 トロールとの距離を測りながら、【爆破ボム】を使うタイミングを待つ。


 このスキルは威力はそこそこあるが手で直接相手に触れる必要があるので使いづらい。特にトロールのように一撃の威力が高い魔獣だとカウンターを食らって自分自身が致命傷を与えられる可能性だって出てくるのだ。そうやすやすと使えるものではない。だから極力【爆破ボム】は使わない方向で作戦を立てていた。


 でもコイツを倒すには使うしかない。魔獣との戦いなんて常に命懸けなんだ。安全な戦いなんてありはしない。


 覚悟を決め、トロール目掛けて一気に駆け出す。


 気付かれてないーーこれなら……いける!


 チャンスと見た草介はさらに加速し、トロールの右足に手を添える。体に触れられたことで漸く気付いたのか、草介目掛けてパンチが振り下ろされた。


「今更遅せえよ。」


爆破ボム】の発動とパンチが直撃するのはほぼ同時だった。


 片足を爆破されたトロールは転倒し、巨体から振り下ろされたとんでもない威力のパンチを受けた草介は部屋の壁へと叩きつけられる。


「草介さん!!!」


「大丈夫…だから……今の内にとどめをを……早く!!」


 身体中血塗れで、息も絶え絶えな状態でとどめをさすよう伝える。


 草介の身を心配していた茉央も彼の姿を見てトロールを倒すのが先決だと判断し、すぐさま【氷壁アイスウォール】を発動する。


 瞬時に4つの氷壁がトロールを閉じ込めるよう四方に現れ、一時的に身動きを封じる。


 これで逃げ場は無くなった。しかも彼女のスキルはこんなものじゃない。


 倒れているトロールの瞳には氷壁の上に立つ茉央の姿が映る。その頭上にある巨大な火球がトロール目掛けて放たれようとしていた。


「いきます。【二重魔法デュアルマジック】【火球ファイアボール】」


二重魔法デュアルマジック】、このスキルは茉央を異常な強さの秘密である。

 スキルの効果は魔法を二重掛け出来るというものだ。簡単にいうと威力が倍になるといった感じだ。【火球ファイアボール】× 【火球ファイアボール】のように同じ魔法の組み合わせる事で威力を倍増させる。


 あの【火球ファイアボール】は下級探索者が使う威力ではない。如何にトロールの耐久性があろうとも、無事では済まないはずだ。更に四方は氷の壁で覆っている。閉じ込められた状態でその中に炎を放たれれば、炎の逃げ道はなくなり対象者を燃やし尽くすまで消える事はない。


火球ファイアボール】をくらい、火を消そうと必死に暴れ回るが氷壁がそれを許さない。身動きがとれず、次第に弱っていったトロールは数分後、動かなくなった。


「やった……やりましたよ。草介さん!!」


「ハハ…やったね。でも俺ちょっと駄目みたい。休憩…させて…」


 思ったよりもダメージを食らっていたらしく、トロールを倒したとわかるや否や緊張が解け、意識が薄れていく。


 最後に聞こえたのは、泣きながら俺の名を呼ぶ金城さんの声だった。


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