第13話 お金が足りない…
久しぶりに自宅のベッドで目が覚める。
「久しぶりにゆっくり寝た気がするなぁ〜。やっぱり我が家が一番だ。」
ベッドから起き上がり伸びをしながら森を出た後の事を思い出す。
惑わしの森から帰還した俺たちは真っ先にギルドへと向かった。
受付に居た隆二は俺たちの姿を見つけると驚いた表情をし、少なからず並んでいた探索者を無視して駆け寄って来る。
「草介、お前生きてたのか!って事は横にいる娘は…」
「ああ、金城茉央だ。これでクエスト完了だな。」
やっと家に帰れる。
後の事は隆二たちギルド職員に任せればなんとかなるだろう。
俺はダンジョン内で起こった出来事を報告すると自宅へ帰った。金城さんも俺と同じく話を聞かれていたみたいだが、俺がすぐに帰ってしまったのであの後どうなったかはわからない。そして現在に至る。
あの三人組どうなったんだろう。一人はデモンラビットに襲われ死んだが、残り二人は行方不明だ。変に因縁付けられても困るし早めに捕まって欲しいんだけどなぁ。
隆二から彼らについて話を聞く為にギルド総合施設へと向かった。ついでに貰い忘れた報酬も受け取らないと。8,000円とはいえ俺にとっては重要だ。
「おう、草介。体はもう平気なのか?」
ギルドに入った瞬間、俺の存在に気付いた隆二が声をかけてくる。
「元々怪我した訳でもないし大丈夫だよ。
それより、あの三人組の処遇はどうなったんだ?常習犯なんだろ?」
「ああ、奴らは昨日捕まったよ。平然とダンジョン潜ってやがったから帰って来たとこを狙って捕まえた。殺人に強姦、窃盗なんかの罪で当分刑務所の中にいるだろう。それに二度とダンジョンに入れないよう探検者資格は奪われた。これでお前も一安心だな。」
探検者資格とはダンジョンに入る為に必須となっている国家資格だ。国家資格といっても特別な試験がある訳ではなく、ダンジョン内で起こった出来事の全ては自己責任となるといった内容の書面にサインするだけで貰える。
「そうか…捕まったんなら一安心だ。あと昨日忘れてたけど報酬をくれ。金城茉央を助けに行った分。」
「あ〜それなぁ。やっぱ覚えてたかぁ。」
困ったような顔でこちらを見ずに頭を掻く隆二。
おい…なんだか嫌な予感がするぞ。
「おい…まさか…」
「ああ、そのまさかだ。依頼人が捕まってるから金は出ねえ。悪いな。」
「そんな…」
嘘だろ。ただでさえ少ない報酬だったのに、それさえも貰えなくなるなんて……
森に入る前に3万も使ったし、それ以外にも奴らにアイテムと装備一式奪われたから何も残ってない。
「経歴を漁ってたら借金やら色々やらかしてたみたいでよ。今回の事件を機に全て差し押さえられたんだ。」
財布の中身を確認すると残り全財産は5万円。家賃3万、携帯1万、水道光熱費が2万ちょっと……ただでさえ足りないってのに働く為には装備を買わなきゃいけないなんて……もう終わりだ。
今後の生活を考え絶望していると誰かが俺の肩を叩く。振り返り姿を確認するとその人物は隆二だった。
「まあその…なんだ。俺が頼んだ手前、流石に報酬無しってのは悪い気がしてるんだ。
今、上に掛け合っちゃいるが時間がかかりそうでよ…本来こういうのはしちゃダメなんだが、これは俺たちからの礼だ。」
隆二が封筒を手渡してくる。
中身を確認するとそこにはなんと10万円が入っていた。
「お前…こんなにいいのか。」
「お前は人一人救ったんだぞ。それでも少ないくらいだ。それに、別に俺の金って訳じゃねえよ。言っただろ。俺たちからの礼だって。」
ギルド内を見渡すと職員全員が微笑みながら俺に会釈する。
そうか…職員のみんなが…
「そういうこった。俺たちギルド職員が探索者に個人的に報酬を払う事はNGなんだ。だから俺はあのクエストを受けて欲しいとは頼んでも報酬を上乗せする事はしなかった。だけどな、さすがに規則に乗っ取って何も与えないってのは俺たちも納得がいかねえ。少ないがせめてもの気持ちだ。受け取れ。」
10万なんて俺からしたら大金だ。これで今月は乗り切った。
「皆さん、本当にありがとうございます!」
俺は職員の方々に頭を下げお礼をいうと早速装備を整える為に防具屋へと向かう。
職員の方々は微笑みながら笑顔で見送ってくれた。そんな中、隆二が防具屋へ向かう俺の背に声をかけてくる。
「おーい。装備を新調すんなら【
【長曽根武具店】だと?初めて聞くな。
まあいつもの武具店に思い入れがある訳でもないし行ってみるか。
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