死の使徒とニトラ
宴が始まり、夕方を過ぎて夜になり、大人たちが酒に酔って、注意力が下がったのを見計らってミリアはニトラに話しかけた。
「新しき『若木』よ。君に使命を与える」
「はい、ありがとうございます。必ずや使命を果たして見せます」
ニトラは内容も聞かずに了承した。
「ふむ、内容を聞いてから、受けるかどうか決めた方が良いと思うぞ」
「ですが、使徒様からの使命であれば、喜んで受けます。使徒様は姉さまを助けてくださると約束してくれました」
(純粋とは怖いものだ、これでは約束を理由もなく反故には出来ないな)
「確かにそうだ。私は約束を反故にはしないし、君の姉も助かるだろう。だが、盲信はするな、アニマは気まぐれだ。使徒たる私でさえ、その真意の全てを把握できてはいない。つまり、私でも失敗するという事だ」
(これだけは、どうしようもない。アニマは完全を嫌う。世界がそうなると決まった時、必ずアクシデントを起こす。アニマは予想不可能な変革を望んでいるのだ……)
「良いんです。ミリア様の優しさを僕は知っています。この本をくださったのは善意からです。それだけは分かります」
「私が嘘を吐いて渡したのにか?」
「その嘘が優しさです。アニマ教の教典を受け取らねば、今も僕は、自分の弱さを憎み苦しんでいました。レッドベアの教えは、弱肉強食、このジャングルで生きてきた僕たちにとって、それは真実でした。
ですが、それは言い訳でもあります。理不尽な暴力を受け入れることで、怒りや悲しみを仕方のない事と割り切っていただけです。アニマ教は、その理不尽に耐えるな、
嘘をつかれたとはいえ使徒様を信じるには、十分過ぎる報酬です」
「そうか、ならば君に、使命を授けよう。それを果たさなければならない状況は、私の望むところではないが、最悪は常に考慮しなければならない」
ミリアはニトラにしか出来ない事を頼んだ。それが、起こらない事を願って……。
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