薬草採取と命の使徒

 フレアは、赤熊人の女性と子供と一緒に薬草採取をしていた。子供たちは初めて見る白樹人のフレアに興味津々で、薬草を採る度にフレアに「見て見て、薬草採ったよ」「見て見て、あたしも採ったよ」「見て見て、僕も採った!凄いでしょ!」と代わる代わる話しかけていた。

 その度にフレアはピエロのように大袈裟な仕草で「おお!凄いなー」とか「偉い!」とか「素晴らしい!」とかリアクションしていた。

 その大袈裟な仕草が子供たちにウケていた。


(なんだ、意外と楽しいじゃないか、黙々と草を集めるだけだと思ってたけど大違いだ。だけど、やっぱり大人たちは僕を警戒しているな~。何がいけなかったんだろう?)

 フレアは昨日、自分がした失敗の原因をまだ理解していなかった。


 薬草採取は順調だった。特に問題なく終わりそうだったが、異変が生じた。獣ではなく魔物が襲って来たのだ。

 魔物の名はバジリスク、体長10メートルの大蛇で、頭には鶏の様なトサカを持ち、牙から猛毒を分泌し、噛まれれば即死する。また、邪眼を持ち見たものを石化させる能力を持っている厄介な魔物だった。

 その皮は硬く体も大きい為、簡単には死ななかった。故に赤熊人の村も何ヵ所も滅ぼされていた。また、宇宙人にとっては、ジャングルでの採取や狩猟時の最大の障害だった。

 この魔物をジャングルから一掃するべく、1万の完全武装の兵士を送ったが、生きて帰った者は居なかった。


 最初に気付いたのは、フレアだった。

「あー、みなさん。悲報です(悲しみ)。厄介な魔物が、こっちに向かって来てます。ここは、僕に任せて逃げてください(バイバイ)」

「魔物って、何が来ているんです?(不安)」

 赤熊人の女性がフレアに質問した。

「あれは、バジリスクですねー、視界に入ったら石化してしまうので、早めに避難した方が良いですよ(お勧め)」

「バジリスク!?みんな、逃げるよ!」

 赤熊人たちは、一斉に逃げ出した。しかし、子供たちの何人かは、逃げなかった。

「あれれ?どうして残っているのかな?」

 フレアの質問に、赤熊人の少年ニトラが代表して答えた。

「使徒様に頂いた、この本に教わりました。戦わずして逃げるのは戦士の恥だと、だから、戦います」

「なるほど、君たちは勇敢な戦士に成りたいんだね。うふふ、嬉しいよ。将来が楽しみだ。だけど、今は逃げなさい。相手が悪すぎる。一流の戦士は、勝てない相手とは戦わないものだよ。まあ、戦わなきゃならない場合もあるけど、今、その時じゃないよ(チッチッチ)」

「分かりました。使徒様、では御武運を」

「ありがとう。子供たち!」

 こうして、フレアは1人でバジリスクと戦うことになった。


(さて、簡単にすませるか)

「イン・ビジブル≪不可視≫」

(これで、石化は無効♪後は風の魔法で首を落とすだけ♪)

 バジリスクは、姿を隠したフレアを熱源を感知するピット器官で捉えていた。バジリスクは獲物を補食する時は邪眼は使わない。なぜなら石にしたら消化できなくなるからだ。

 邪眼は、倒せない強敵に会った時の切り札だった。

 だから、バジリスクは、小さな獲物を丸呑みにするべく口を大きく開けて、フレアに襲いかかった。


「ウインド・カッター≪真空刃≫」

 風の刃は、フレアの意図したとおりに、バジリスクの頭部と胴体を切り離した。

(あっけないな、やはり強敵とは得難いものだ。さて、バジリスクの邪眼は、貴重品だし、使いでのある材料だし、皮は防具にもなる。

 そして、肉は焼いて食べると美味しいんだよなー。持って帰って、みんなで食べるか♪)

 フレアは、バジリスクの死体を魔法の収納スペースに放り込み村に戻った。

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