赤熊人と銀狼

「来たぞ!あれが、シルバーウルフの斥候だ。クレア殿はどうする?」

黒樹人くろきびとは樹と友達です。樹に登って見学します」

「シルバーウルフも樹を登れるが?」

「大丈夫ですよ。樹の上から、こいつをおみまいしますから」

 そう言って、クレア(ミリア)は、アサルトライフルAR999エーアールスリーナインを取り出した。

「その武器で殺せるのか?」

「もちろん、さっき言ったように殺すことは出来ませんよ。ですが樹から落とすことは出来ます」

「なるほど」

「ですので、私のことは気にせず。狩りに集中してください」

「分かった」

 ミリアは、言った通り樹に登り、ボルドはフレアから貰った剣を両手で持ち、正眼に構えた。シルバーウルフは全部で10体、ボルドを囲み円形に布陣した。

 シルバーウルフは、体長5メートルの銀色の狼、雑食で群れで行動し、狩りを行う。

 その毛皮は、刃物を通さず、銃弾も弾く。さらに、レーザー等の光学兵器も通じないため、宇宙人の狩人部隊20人が、なす術もなく全滅した事もある。故に、宇宙人の間では、高級品として扱われていた。

 そして、狩猟難易度はAランク、簡単に言えば狩人の命の保証はないレベルだった。


(さて、ボルドの実力、見せて貰おうか、フレアの話だと闘士の器らしいが……)

 ミリアは樹上でアサルトライフルを構えながら、ボルドの戦いを観察していた。


 シルバーウルフは、全方位から一斉にボルドに襲いかかった。だが、ボルドは回転しながら水平に剣を一閃させ、全てのシルバーウルフを弾き返した。

 弾き返されたシルバーウルフのうち、7体は空中で体勢を整え着地し、臨戦体勢をとったが、残り3体は無様に地面に転がっていた。

 ボルドは、その中の1体に飛びかかり、両手で持っていた剣を左手だけで持ち、右腕でシルバーウルフの首をわき腹に抱え上げるように絞め上げた。

 シルバーウルフは、逃れようと暴れるが、ボルドは、微動だにせず、シルバーウルフの首を絞め続けた。

 残りの9体が仲間を助けようと、次々とボルドに飛びかかるが、ボルドは左手の剣だけで、シルバーウルフたちを弾き返した。

 さほど、時間もかからずに、首を絞められたシルバーウルフは、気絶し動かなくなった。それを見て、他のシルバーウルフは、逃げて行った。


(強いな、これなら神器に選ばれてもおかしくないが、違和感がある。剣の大きさが合っていないようだ。太刀筋に乱れがある)


 ミリアは、樹から降りてボルドを褒め称えた。

「いや、お見事です。毛皮が、刃を通さないなら、絞め落としてしまえば良いんですね~。まあ、私には真似できませんが(アハハ)」

「本来なら最初の一撃で5体は気絶させれるんだがな……。まあ、捕獲するのは1体で良かったから、問題無かったが」

「本来なら?」

「ああ、俺の本当の武器は刃渡り3メートルのクレイモアなんだ。今は折れて使えないがな」

「そうなんですね~。もし、良ければ、その武器、私が直しましょうか?」

「対価は?」

「昨日、言ったと思いますけど、値引きですよ」

「良いのか?」

「ええ、シルバーウルフの捕獲方法も判明したので、こちらは得しかしてないんですよ(笑顔)。だから、少しだけ還元するんです。そしたら、次も私との商談に応じてくれるでしょう?」

「ふむ。そう言う事か、抜け目ないな」

「それが、商売ってもんですよ」


(空地人の襲撃まで残り2日、鉱山人こうざんびとの職人でも1日で直すのは厳しいか?だが、ボルドの戦闘能力は頼りになる。いかに私とフレアが強くても村人全員を守るの厳しい。全員がアニマ教徒なら、守り切る手段もあるのだが、何も信頼されてない状態では全員に教典を受け取って貰うのは難しいだろうな。

 間に合うかどうかは別にして、手に入れたシルバーウルフと薬草を換金した後で鉱山人の国、エンボル工業国に行くか)

「目的は果たしたし、村に戻るぞ。クレア殿」

「そうですね。戻りましょう」

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