四章“優艷雅の愛狂飆”玉藻前編
メギドダンジョンブレイク編
第102話 メギド攻略会議
「これって……超級探索者証!!」
差し出された銀色のカードに、思わず興奮する。
(かつて夢に見た銀の探索者カード……! まさか、こんな早く手に入れられるなんて……!)
「って、ダンジョンブレイク!?」
「お、おお、そうだ……日本では前例がない中級以上のダンジョンのブレイク、しかもメギドだ」
協会長は頭を上げ、言いづらそうに言う。
「しかも?」
「ああ。メギドは日本にあるダンジョンの中で最も利用率が高く、最も利益を出している国内最重要ダンジョンだ」
メギド……正式名称を鉱物ダンジョン。
多種多様な魔法鉱物が微量採れ、ゴーレムは日本に数人の生産系能力者の強化に役立っている。
需要が限られる下級ダンジョンに比べても、僅かな人数しか入れない上級以上のダンジョンに比べても、中級ダンジョンというのは最も重要なダンジョンとなる。
更にメギドは国内で唯一、鉱物類が確認されている資源源だ。
それがブレイク……つまりモンスターが外に出るとなると……
「……日本の鉄鋼産業並びに魔法鉱物研究、生産系スキル持ちの育成、その全てが一斉ストップするってことか」
「そうなんだよな……流石に政府も“依頼”を出したらしいぞ。
「天星裕也……!!」
俺の言葉に、協会長は頷き、一枚の招集票を見せる。
その一番上には、確かに“極級探索者”天星裕也ならびにそのパーティと書かれていた。
天星裕也。
現存する日本に唯一の極級探索者で、強力な土魔法を扱う魔法系探索者だ。
当然そのパーティも超級探索者一人に上級探索者二人という超上級パーティ。
確か最近は上級ダンジョンである鯨ダンジョンの攻略を進めていたはずだが……
「ああ。日本唯一の極級探索者だ。ダンジョンブレイクと聞いたら即参加を表明してくれた。おかげで十分に募集人数も埋まってきてるわ」
「へぇ……でも、下級探索者まで募集するんですか?」
書類の一番下には、中級探索者百人前後、下級探索者数百人と書かれている。
(あれ……この名前って……)
「ダンジョンブレイクは初めてだろ? というか、俺も二回目だし、なんなら前のダンジョンブレイクじゃ宝晶は生まれてなかったか。下準備とか警備とか運搬とか、色々あるんだよ」
「あ、そうか。なるほど」
俺の質問に、協会長はひとつひとつ丁寧に返す。
それがまるで、自分がどれほど大事な存在かを示している……気がした。多分。
(宝晶の全力はまだ底知れないからな……まぁ、無茶させるわけには絶対にいかないが)
「……?」
どうやら美穂と蓮も既に耳にして、了承してるらしい。
てか、勝手に
「で……そこまでしたなら十分すぎませんか? なんでそこまで……」
俺の心配に、協会長はこれまでで一番真剣な顔で告げた。
「ダンジョンブレイクは甘く見れない。実際、初めて起きたブレイク、下級ダンジョンのダンジョンブレイクですら、数百の探索者が命を散らした。下級探索者はおろか、上級探索者もだ」
「そんなに……」
恐らく初のことで対処が分からなかったということもあるだろうが、確かに下級ダンジョンでそれ程の被害を出すのは、超危険と言わざるを得ないだろう。
「それで今度は初めての中級ブレイク……極級一人に超級も大量投入……と」
「ああ。下級ダンジョンは何度もブレイクが発生していて、対処にも慣れてきたが……中級ともなればどれほどか分からん。無駄な被害を出さないために流石の国家も迅速な判断を下したんだろうよ」
まぁ国会が早く動いたのは国の得られる税金がガタ落ちするのが原因だろうが……
「そうなんですか。当然行かせてもらいますよ」
「あ、ああそうか。感謝する。で──」
なんだか今日の協会長はやけに話づらそうだな。
何か俺変なとこでもあるのか?
「今すぐちょっと来れるか?? 明日にはもう潜らなきゃいけない。顔合わせと打ち合わせをだな……」
「当然です」
~~~~~
「……今日は、よく集まってくれた。早速で悪いが、明日の攻略のための作戦会議を始める」
大阪探索者協会中央支部の二階。
測定室の隣にある会議室にて、
「あ、まずは自己紹介しときましょう。私は
「
中心の席に座る二人が立ち上がり、皆に向かって挨拶を交わす。
その声に、集まっていた超級探索者たちはざわめきだした。
(日本唯一の極級探索者……当然、注目の的だよな)
この場には今、四学園の学園長と俺たち
その中には、『アレクシスの牙』のリーダー、
そんな彼らからしても、天星裕也という男は憧れであり、伝説のような存在なのだ。
天星裕也に注目が集まる。
「私は
「あ、私は
「……
スッと前に出た元第一学園長、“業火の魔女”こと美波さんに続き、まずは学園長たちが挨拶を始めた。
そして……
「
「へぇ~! 学園長が十年ぶりに変わったって聞いたけど、そんなことになってたのか!」
「すみません。私たちはつい先ほどまでダンジョン攻略中でして……」
学園長たちの礼に、有紗さんは申し訳なさそうに返す。
(意外と、裕也さんはフレンドリーっていうか、オープンな感じか。んで
「で、俺の番だな。俺は氷室勝瑞って言う。よろしくな」
勝瑞さんは先程まで俺を見て目を見開いていたが、挨拶しながらこちらにウインクを送ってきた。
(やっぱり既に超級クラスだったんだね)
(まあ……)
「おお。“雪鬼”ですか。わしは
「俺は
「私は
勝瑞さんに続いて、続々と集まった探索者たちが自己紹介をしていく。
里佳子さんは、
俺と美穂を見て少し頬を引きつらせている。
『まぁ、あれだけぼろぼろにしたんじゃあのぉ』
(やったのは悪鬼だって……)
『ア゙ァ!?』
さて、そろそろ俺たちも自己紹介しなきゃな。
「……私は神崎美穂」
「あー……“悪童”とか言われてるけど、先日超級探索者になった鬼塚蓮だ、お願いしゃす」
美穂と蓮が手短に言う。
そして、残る全員の視線が集まるのを感じて、俺は名乗りを上げた。
「宝晶千縁──“革命児”だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます