第65話 夢のマイホーム(選定)


「うわ〜! すっげぇ!」


「ハハ、気に入られましたかね、宝晶様」


 なんだこれ!

 

 俺は今、不動産に来ていた。

 今日はダンジョン攻略に行けない用があると二人に言って、放課後すぐ帰ってきたのだ。

 結成二日目から何やってんだとやたら突っかかられたが、家を買うと言ったら流石に納得してくれた。

 ……なぜか二人に紹介する羽目になったが。


(こんなに豪華な一軒家がこの世にあったのか!?)


 豪華な壁に、シャンデリア、螺旋階段に吹き抜けまで。

 これじゃネットで見た城と大差ないぞ!? 床もほら、綺麗な……これなんだっけ? 大理石か!


 まあ流石に広さは城ほどじゃないが。


「すごいですね! 御伽話の城みたいです!」


「ははは、喜んでくれて何よりです。この家はそもそも特別客用に作られた物なので……」


 最後の方はほぼボヤキだったが、俺の耳なら聞こえる。

 特別客用? それ政府の偉い人とかが作らせといたとかじゃねぇよな?

 まあ、俺も十分特別な客に入るよな? うん、大丈夫だろ(適当)!


「で、これいくらなんですか?」


「そうですね……少し余裕を持って見積もって……2億5000万程度でしょうか?」


「ブフォッ!!」


 たっっっっっっっっか!!

 ま、まあ上級探索者なら数十年で貯めれないこともないが……流石に探索者からしても高いな。

 ちなみに、探索者級別平均年収がこれだ。


・下級探索者 数十万

・中級探索者 二、三百万

・上級探索者 千万〜(潜るダンジョンの危険度による)

・超級探索者 一億〜(潜るダンジョンの危険度による)

・極級探索者 国家支援

・王級探索者 国を作れる


 下の方値段じゃないって? そりゃ日本に一人の極級探索者に値段なんかつかんやろ。王級なんて世界に五人だしそれぞれが国を作れる力を持っていて、探索者の国を作ってるんだから。


 ローン前提としても、そこそこ危険なダンジョンでレアな素材を持ち帰る必要があるレベルの値段だ。


(さて、どうするかな……)


 夢のマイホーム、こんな豪華なのを見せられたらぜひ買いたくなってしまう。


(それに……莉緒と住むことになるかもしれない家だし)


 恐らく、しばらくしたら大阪に来てくれる……はず。

 俺が探索者として、お金持ちになることは達成した。あとは、莉緒の方が花嫁修行……? を終えたら約束達成だ。


 そしたら二人で結婚しようと、約束していたから。


(ふふ……それなら尚更、このくらいの家に住まなきゃな)


 思わず想像して、ニヤけてしまう。


『ほほぉ……くだんの、ちよの好きな人か! ちよの愛を受けられるなんて……羨ましい限りなのじゃ!』


『アアァ……愛とはやはり、美しい……』


(っ……)


 急に脳内が騒がしくなった影響で、頭の中がビリっとする。


「じゃあ……数日後にまた来ます! 絶対買いますから、置いといてくださいね!!」


「はい、承知しました! お買い上げありがとうございます! 宝晶千縁様がお買い上げしてくださるなんて、それこそ夢のようです!」


 あー……箔がつく的なあれか? ようわからんけど。

 とにかく、早く金を貯めよう!!


「俺は一括払いしかしないからな!!」


『クレジットカード持ってないだけじゃろ……』


 俺は急いで、ダンジョンに向かうのだった。


〜〜〜〜〜


「はえぇ……本当に千縁さんってすごいんですね! まさかメギドの三十階層台までいけるなんて! メギドの最深層を最後に更新したのは超級時代の天星さんですから、実質超級探索者級ですね!!」


「換金お願いしますね。いくらくらいになりますかね……?」


 結局待ちきれず、そのままダンジョンに向かってしまった。パーティの二人には今日休みと言ってしまったので、一人で行くことができた。


 天星祐也てんせいゆうや……日本唯一の探索者か。

 メギドの判明してる最深部、三八階にいってきたんだから瑞樹さんが驚くのも無理はない。


「うーん、これなら一千万は優に越えますよ!! 恐らく二千万あたりかと」


「うーん、足りないな……」


 思わず口からそう溢れる。

 その時だった。


「よう、宝晶! 何やら困ってるみてぇだな!」


「きょ、協会長!?」


「え、協会長?」


 瑞樹さんの背後から、ヌッと協会長海原真が現れたのは。

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