第63話 パーティ結成


「で……ちよはスキル見せてくれないのか?」


「……見せて」


「いやなんで?」


 今俺たちはメギドの探索を終え、家路に着いているところだ。

 結局あの後は、30階辺りまで行ってから少し話して引き返してきた。


 理由は、三人ともつい昨日暴れたばかりで疲労もあるし、正式にパーティ申請をする時間もいるからだ。


 実際は、俺がスキルを見せたくなかったってのもあるが。


(まだは見せてよくて、誰は見せたくないか、決めれてねぇもんな)


 少なくとも、悪鬼はテレビで中継されているくらいだから国民皆が知ってるだろう。

 なんたって視聴率90%らしいからな。

 流石に現実味がねぇ……流石探索者。


(てか、何気に受け入れてるけど俺、国民皆に知られてるレベルの有名人になったんだよな……)


 “神童”を知らない人が居なかったように、その“神童”に勝った俺を知らない人は居なくなるだろう。


(莉緒とはいつ会えるかな……)


「あ、瑞希さん。パーティ申請を」


「あ、千縁さん! パーティ組むんですか!?」


 協会に入ると、受付の瑞希さんが真っ先に目に入ったので声をかける。

 以前の件でそこそこ有名になってたが、学園対抗祭で更に有名になっただけあって、瑞希さんが名前を呼んだ瞬間に視線が集まる。


 そして皆絶句した。


「意外ですね〜千縁さんはソロで行くのかと! で、パーティのメンバーさんは……」


 そこで瑞希さんも、後ろを見て絶句する。


「え……“神童”!? “悪童”まで!?」


「……」


「あぁー……」


 その原因は当然、蓮と美穂だ。


「あっ、すみません! えっと、すぐパーティ申請用紙を取ってき……って協会長!?」


 瑞希さんが、慌てて用紙を取りに行こうとして……突如現れた協会長、海原真を見て飛び上がる。

 なんか……可哀想だな。


「おう! 来たか! まさかこんな豪華なメンバーで来るとは思ってなかったけどな! 別々の学園のトップが集まることなんてあるのか? ダンジョンに行ってたようだが」


 この人なんでいつも【隠形おんぎょう】使ってんだ?

 突然現れた協会長に、美穂と蓮ですら少しビクッとしている。

 恐らく美穂の方は何かがいることくらいは勘づいていたっぽいが。気配に鋭そうな狼になってたし、【月狼変化】の副効果だったりするんかね。


 因みに俺が気づけるのは、脳内で教えてくれる仲間のおかげだったりする。

 二人以上話すとめちゃくちゃ頭痛いから緊急時以外遠慮してもらっているが。


(協会長がいると頭が痛くなるな……敵意を持つ人だけ、とかで区別出来たら良かったんだけど、流石にそこまでは無理なんだよな)


 そう都合のいい話はないってことだ。


「とりあえず、先にパーティを」


「パーティ? まじか!? こちゃすげぇパーティだな! この紙に名前とパーティ名書けばいいからよ!」


 そんなに早く俺と手合わせしたいのか、協会長は適当に一枚の紙をポイっと捨てると、アイテムボックスから剣を一振り取り出して準備運動アップを始めた。


「「パーティ名?」」


「うーん……どうだろ」


 学生最強の3人パーティだし……


「……新星ニューノヴァ


「え?」「あ?」


 俺が決めあぐねていると、意外なところから声が上がる。


「美穂?」


「……」


 なんだ? パーティ名くらいはこだわりがあるってか?

 まあ、絶対俺が考えるより絶対良いからいいや。


「あ? 決めんのはちよじゃ……」


「よし、それで決定で!」


「ええ……まあ良いけどよ」


 蓮がまた文句を言いそうだったので、急いで書き込む。


「はい! 新星ニューノヴァですね! お三方にピッタリです!」


「おう、出来たか! じゃあ千縁は、昇格試験だ! ついてこい!」


「え、ちよって最近中級に上がったばっかじゃ……」


「……私たち、超級、上級。妥当」


 ちよの前ではルールすら関係ないってか……

 とか蓮が妄言を吐くのをバックに、俺は真さんについて行く。


 協会ギルド闘技場に来て、武器を構えた俺に、「おっそうだ」とまことさんが一言。


「そういえば、なんであの三人ドリームメンバーでパーティを? 誰かの思惑か?」


 軽い雰囲気で言っているが、瞳の奥に潜む真剣な探りは隠せていない。

 何か上層部での問題があったのだろうか。


 ……どうでもいいが。


「まあ……たまたま? 適当ですね」


「えっ?」


 それを皮切りに、俺の特別昇格試験が始まった。




このあと、パーティ名学生達ニュービーズとか黄金世代ゴールデンとかどう? って言ったらめちゃくちゃ引かれた。


 解せぬ。

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