第58話 打ち上げ


「宝晶千縁と対抗戦メンバーの皆に、乾杯!!」


「「「「「乾杯!!」」」」」


 対抗祭の日の夜。

 俺たちは興奮冷めやらぬまま、少し高級なレストランへと来ていた。


「ちよぉぉ!」


「「兄貴!!」」


「うぇっ、抱きつくなよ!」


「あはは、千縁くんのところは楽しそうだねぇ」


「……」


「まあ、そりゃ主役だしな」


 白城しろきさん、剛田さん、そして加藤が言う。

 対抗戦関連メンバーの席から、俺は一人離脱していたからだ。


 俺がいるのはは対抗祭ダンジョン攻略戦メンバー席。

 俺の友達がいるからと言う理由で抜け出してきたが……


(まあそりゃ加藤に玲奈と……めんどくせえからな)


 加藤はなんかかっこつけて頭おかしくなってたし……玲奈もか?


(そういや、話したいことってなんだったんだ? 今までの謝罪とか?)


 まあ、どうでもいいか。

 俺にとっては、バカにしてきていた加藤よりも裏切った玲奈の方が嫌いだからな。


「てか、うちが明日から第一学園とか信じられない!」


「というか、なっちゃったら来年から俺らより強いやつばっか入ってくるってことだよな?」


「なんでもいいけど、第一学園っていうブランド力がすごいんでしょ!」


「コーラ二つー!」


 流石に30人×2クラス×3学年=180人は騒がしすぎる。

 俺としてはそんな大人数が入る店が大阪にあったことに驚きだが。


「むぐ……って、ちよ、外になんか来てるぞ」


「え?」


 悠大に言われて外を見ると、カメラを構えた人が何人か……


「きゃー! テレビの人じゃない!?」


「私たちもうつしてくれないかなー!」


「ご飯食べてんのに来んのかよ……」


「ま、それだけちよが凄まじかったってことだな。すげぇじゃねぇか!」


 まあ、そりゃ有名になりたかったわけだし、まだまだ嬉しいところではあるが……


「流石にちょっと言ってくるわ」


「おー、いってら」


「「兄貴行ってらっしゃい!」」


 流石に食事中に見られるのは鬱陶しいため、俺は一言言いに外にでる。


「今ご飯食べてるから迷惑なんだけど……」


「宝晶千縁様」


 俺が出て行くように言おうとしたところ、その前に人混みの中から一人出てきた、スーツの男が膝まづいた。


「えっ!?」


「大阪探索者協会長から御呼び出しがあります。できればすぐ来ていただきたい」


「協会長?」


 探索者協会長? あぁ、大阪支部のか。

 ん? それって俺が昇格試験受けに行ったあの協会ギルドのギルド長と同一人物だよな?


(ってことは重吾さんの言ってた通りランクアップを図ってくれるってわけか)


「ああ、じゃあ明日行きます」


「明日? できれば今すぐにでも来ていただきたいのですが」


 俺はその言葉にムッとして目に力を込める。

 一瞬、の眼が紫金色に輝いた。


(ああ……そう)


「失せろ。あんたのためだ」


「……あまり調子に乗ってると……!?」


 スーツの男がこめかみに青筋を浮かべて、俺の肩に手を伸ばし……背後から突然現れた大柄な男性に掴まれ、止められる。


「あーあ……だから黙って引いていた方がよかったのに。ねぇ、協会長?」


「きょ、協会長!?」


 そこにいたのは、協会長だった。


「誠司くん、俺はと言ったのだが」


「い、いえ、わた」


「クビだ、帰れ!」


 協会長の放つ魔力の波動に、その場にいたカメラマンや野次馬たちは皆、蜘蛛の子を散らすように逃げだした。


「あんたが重吾さんの紹介の?」


「おう! 俺が大阪探索者協会協会長の海原真かいばらまことだ! 重吾から話は聞いていたが、ここまでとは驚いた! というか、どうやって俺の隠密を見破ったんだ?」


 部下の失態に対する態度とは打って変わって、豪快に笑った大阪協会長、海原真は、俺に握手の手を差し出したのだった。


















​───────​───────​──────

これにて、学園対抗祭編は終了となります!

ここまで応援いただき、本当にありがとうございました!!

明日からは“モンスター研究家と地下ダンジョン編”が始まります!

そして新編&日曜日ということで、朝8:31分並びに18:31分、そして21:31分の三本立て!

お見逃し無く!

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