第57話 side東城莉緒:真実と陰謀


「勝者、宝晶千縁ィィィィィィ!!!!」


「「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」」


「ちよ、くん……?」


 私は今、テレビを見ていた。

 探索者の町、大阪の四校が対決する『大阪四校学園対抗祭』。

 毎年視聴率が70%を超えるほどで、国が定めた祝日にすら該当している。


『いやー大波乱の展開でしたね……一体、彼はどこから現れたのでしょうか』


『おかげで視聴率は90%を超えましたよ。歴史上初なのでは?』


(確か、宝晶千縁って……)


 確かここに引っ越す二年前。私が目をつけた子だ。


「東城莉緒……俺はお前に会いに、ここに来た」


「!!」


 心臓が跳ねる。


(まさか……まだあの約束を……)


 思わず、笑みが溢れた。





「──これは儲けもんだなぁ♪」


 いやーまさか遊びで引っ掛けてたあの可愛い子が、本当にあんな強くなるなんて。

 しかもまだ私にゾッコンだったの?


「ふふふ……ウケる。私にもツキが回ってきたかなぁ♪」


 あの時は確か、次誰をだまくらかそうと決めあぐねていた時、友達の金城玲奈かなしろれなちゃんから千縁君のことを聞いたんだっけ。


「いやーあの玲奈ちゃんが初恋なんていうから……奪っちゃった♪」


 私たちを見る玲奈ちゃんのあの目は最高だったなぁ……


「こ、れ、は……うーん、でも、連絡手段がないなぁ」


 あの時千縁君はスマホ持ってないって言ってたしなぁ……

 ま、持ってても交換しなかったか。


「それなら大阪行こうかな〜」


(いつか中級、上級探索者になれたらいいねっ! 私も家事とか料理とか、それまでには極めるから! そうなったら結婚しようね! ……確かこう言って回ってたなぁ)


 中二の途中でこの田舎に引っ越してきたが、それまでは大阪で10人ほど引っ掛けてきた莉緒だ。

 千縁は初心で可愛かったのと、友人の金城玲奈の初恋相手だから引っ掛けたが、その他は全員現時点で優秀な探索者生だった。


(1番期待してなかった、遊びのあの子が、ねぇ……本当人生って分からないものだなぁ)


「よーし! 今、会いに行くからねー、ちよくん?」


〜〜〜〜〜


「うそっ! 勝った!! ちよ君勝った!!」


「あ、あの、優香さん、もう収録始まるんですけど……」


「ちょっと!! ちよ君優勝したのよ!? 大阪学園対抗祭よ!? それどころじゃないわ! 余韻に浸らせてよ!」


「い、いえ、ですから優香さん、対抗祭を見るために既に時間ギリギリまで待ちましたよね……?」


 とある事務所の控え室にて。

 高校生にしてアイドルの卵、飛彩優香は、大阪四校学園対抗祭のテレビ中継を見て沸き立つ。


「ってえ、神童に勝った人がいるんですか!? ってもしかして……知り合い!?」


「うん。こないだデートも行ったんだから!!」


 優香は両頬に手を合わせて頬を染める。


(もしかして……)


 スタッフは優香をみて閃いた。

 優香は顔に出易でやすすぎる。


(優香を利用すれば“神童”越えの彼に接近出来るかもしれない)


 そうすれば、うちの会社にとってもまた利益になるだろう。


「そうですか、とにかく今日は撮影ですので準備の方よろしくお願いします。またデートにいけるといいですね」


「えっ! う、うん……」


 優香が出ていった後、一人残されたスタッフは「会長」と書かれた電話帳を開き、ニヤリとほくそ笑むのだった。

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