第56話 千縁の会いたい人


「それでは、第二十三回、大阪四校学園対抗祭を閉会いたします! それでは、第一学園は前に!」


「はっ!」


 新第一学園学園長である滝上学園長が一歩前に出る。


「……この度、貴校を第一学園とし、大阪ならびに日本の代表校とする。学園生、礼!」


 司会者がそう言うと、俺たちは合わせて頭を下げる。


『おィおィ、千縁の方がつえーだろ。頭を下げるのは他の奴らだ』


「礼儀だよ礼儀。それにここは地獄じゃねぇ、現世だ」


 “悪鬼”……俺の契約者だ。本来はちゃんとした名前があったらしいんだが……ある事情で名を失い弱体化してしまったらしい。

 それでも、地獄では群を抜いて最強の存在である。

 そんな悪鬼の性格は……一言で言うと傲慢。それに尽きる。


 まさしく傲慢中の傲慢、傲慢の王だ。


「それでは最後に、学園を勝利に導いた“革命児”である宝晶千縁ほうしょうちよりさんにインタビューしたいと思います!」


「!!」


 閉会式も終わりに差し掛かったころ、カメラを持った女性が俺を台の上に手招きした。後ろにはいろんな機材を持った人たちがいる。


「ちよ……行ってこいよ。これが、“夢”だったんだろ?」


「悠大……」


 俺は門で力を手に入れて、昔抱いた“夢”は全て叶えると自分に誓った。

 そして、これはその最もたる、最大の“夢”……


(ついにこのに、俺は辿りついたんだな……)


 悠大に後押しされて、俺はスピーチ台に立つ。


「今回、優勝確実とも言われていた黄金世代筆頭、“神童”に勝利したわけですが……今のお気持ちをどうぞ!」


「あー……まずは勝てて良かったという安心感が一番大きいですね」


 俺がチラッと美穂の方を見れば、美穂はこちらを見る気もないようだった。

 負けたことが気に食わないのだろうか。そういえば、最後の方何か気になることを言っていた気が……


「ほうほう! 対戦時、“神童”に対して感じたことも、聞かせてください!」


「それは……」


 シャッターの音だけが鳴り響く中、俺は少し考えて、本音を言った。


「……流石は“天才”だなと思いましたね」


「っ!!」


「やはり、宝晶選手から見ても“神童”は手強かったようですね! それでは、最後に一言!!」


 やたら“神童”と比べたがるテレビスタッフが押し付けるマイクを顔から離して、俺は少し深呼吸する。


(いざテレビで配信されてると考えると、やっぱ緊張するな……)


「その前に、ちょっと良いですか?」


「……?」


「俺は──」


 注目が集まる中、俺はゆっくりと息を吸って、宣言した。


「俺には、探してる人がいる」


「「「「「!!」」」」」


「えぇ!? そ、その人のお名前は……?」


 スクープの気配に、インタビュアーの女性が興奮した声で効果音を流す。


 俺はたっぷりドラム音が鳴り止むのを待ってから、しっかりと聞こえるようにその名を呼んだ。




東城莉緒とうじょうりお──俺はお前に会いに、に来た」





















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ついに千縁の会いたかった人……東城莉緒の登場です。

近況ノートをご覧いただければ過去の話がありますので是非‪^^

次回は莉緒sideとなります。

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