第52話 side第二学園:その正体は
時は“神童”神崎美穂が秘匿されていたスキル【月狼変化】を使った頃まで遡る。
「嘘でしょ……まさかまだ、全力を隠していたなんて!!」
「なんだと……?」
第二学園控え室にて、二つの驚愕の声が上がる。
「神崎さんって去年の中学大会の時も、あんなの使ってなかったよね……?」
例のお姉さん、
「あいつ……!!」
鬼塚は去年、中三の時に、中学探索者大会という日本で一番強い中学生を決める大会に出て、決勝戦で神崎美穂と当たったのだ。
自分の他に、もう一人の天才と言われてきた金髪の少女。ハーフではないらしいが、どういうわけか染めてはないらしい。
自分なら“神童”なんてたいそうな名の少女にかって勝てると信じてやまなかった鬼塚だが、結果は敗北だった。
完敗、とまではいかなくても、接戦ですらなかった。
それでも学生離れした能力から“悪童”なんて腹の立つ称号をもらったが、鬼塚の心の中は今年こそ“神童”を負かしてやるという気持ちで満ちていた。
だから、第一学園に誘われた時も“神童”がいると聞いてあえて第二学園に入った。同じ学園だと大会の場で戦うことができないからだ。
(なのに……あいつに、負けちまったな)
今年こそと臨んだ学園対抗祭だったが、どこからか現れた少年──宝晶千縁に負けてしまい、“神童”とは対戦すらできなかった。
「……」
「あ……鬼塚君」
由梨は鬼塚の過去の傷に触れてしまったと思って焦って声をかけるが、その心配は杞憂に終わった。
「……今年こそは勝つつもりでいた」
「……」
「なのに、まだ本気も出されてなかったとはな」
鬼塚はつい苦笑する。
千縁のせいで“神童”と戦えず、最初は腹を立てていた鬼塚だが今の試合を見ているとそんな気持ちは吹き飛んでしまった。
(あんな隠し玉があるから超級探索者だったのか)
「うん……?」
「あ……? ……!!!!」
そこまで言って、鬼塚は再びテレビに視線を戻し……固まった。
『おい……おい……嘘だろ!? んなばかな……いや……そんなわけ……』
「あ? どうした、鬼童丸!」
千縁が何やらしようとした瞬間、鬼童丸が震えたのがわかった。【憑依】契約をしている以上、いつでも頭の中で会話ができるのだが……こんな怯えた鬼童丸は初めてだ。
恐らく、千縁がついに解放した【憑依】……悪鬼? とやらに関係しているんだろう。
「酒呑童子様以外に俺より強い鬼はいないと言ってなかったか? 悪鬼なんて名もない雑兵じゃ……」
『ばかか!! あいつは、違う……違う! あいつは名を剥奪されたはずだ!』
異常なまでに狼狽える鬼童丸。
「なんだ? あいつはなんなんだ?」
鬼塚はテレビの中で姿を変貌させた千縁を指差して聞く。
『あれは……あいつは……名もなき雑魚鬼じゃない! あいつは……!!』
──かつて名を失った、伝説の鬼だ
続くその言葉に、鬼塚は絶句した。
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