第47話 side第二学園:鬼塚蓮
「……」
「……」
第二学園の控え室にて。
“悪童”こと鬼塚蓮と、お姉さんこと水月由梨はテレビ中継で第四学園……というより、千縁の試合を観戦していた。
「……」
「……そんなに気負わなくても、ほら、調子悪い時とかあるでしょ?」
由梨は千縁に負けてから一言も発さない鬼塚に慰めの言葉をかけるが、鬼塚は依然黙ったままだった。
「……うわ、ほんとに千縁君って強いんだ。でもなんであんな逸材が第四学園に来たのか……やっぱり何かおかしいなぁ」
「……」
正直、そう思わない人はどこにもいないであろう。
“神童”と“悪童”、この二人は中一の頃から探索者に生涯を捧げてきたわけだ。
それでも上級、超級になったのは早すぎておかしいと世間では言われている。
(あいつ……高校から探索者を始めた、だと?)
鬼塚は昼休憩に捕まえた第四学園の生徒から、聞いていたのだ。
千縁が探索者を始めたのは高校生から。つまり一年も経ってない。
しかも、夏休みが始まるまで、彼は第四学園でも指折りの弱者だったらしい。
その時はスキルに目覚めてなかったから弱かったんだと思う、とのことだが、それだけで片付く戦力じゃない。
千縁は今わかるだけで超級探索者くらいの力を最低でも身につけている。
本来なら才能ある若者が十年以上かけてたどり着けるかどうかの力だ。それくらい、上級と超級には差がある。
(俺たちが四年かそこらで超級前後まできたのですら天才だの大騒ぎされて来たのに、あいつは10ヶ月だと? しかも、スキルを手に入れてから3ヶ月?)
「……鬼塚君、どうしたの? 具合でも悪い?」
普段はこんなことを言ったらブチギレられるわけだが、それでも由梨は鬼塚を励ましてあげたかった。
しかし、今回はそのどちらも叶わない。
鬼塚は依然考え込んだままだ。
(そうか……違和感の正体がわかった)
鬼塚は自分の【憑依】契約者、鬼童丸と話し合いながら、あることに気づいた。
(妙な既視感があったんだ)
身体強化系と言っているようだが、なんのスキルも使っているようには見えなかった。
身体強化系とは言っても、発動していればなにかしら魔力の動きをうっすらとでも感じられるはずだ。
なのに、千縁の体からは魔力を一切感じなかった。
つまり、身体強化作用は、千縁のスキルの副効果だ。
鬼塚自身も、【憑依:鬼童丸】を持っているから身体能力が副効果としてかなり上昇している。メイン能力と別にこうして副次効果があるスキルというのはレアだが確かに存在しているのだ。
(冗談だろ……副作用であれ? しかも、鬼童丸があいつの最後の技……【虐殺】だっけか? あれに異常なほど警戒心と怯えを抱いていた)
傲岸不遜な鬼童丸があんな状態になったのは初めてだ。恐らく、“鬼”と関係があるのだろう。
というより、あれが副効果というなら……
「鬼塚君? ほら、元気出して──」
「あいつはさっき、スキルを使ってなかった」
「え!?!?」
鬼塚の言葉に、由梨はつい体を跳ね上げさせた。
「あいつのスキル……もしかして」
鬼塚は、ライブ映像を見ながら千縁のスキルについて一つの仮説を立てた。
(【憑依】……?)
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