第46話 玲奈の秘められた気持ち
「これは驚きの展開だアアアアア!!! 第四学園加藤選手、巧みな嘘で高田選手を相討ったアアアア!!」
「卑怯だぞー!!!」
「誇りはどこにいったんだー!!!」
「ハハハハ!! いいぞ! もっとやってやれ!!」
観客たちはいろいろな反応を示すが、やはり加藤に対する批判が多かった。
「第四学園は後がない!! 再び第四学園の命運は、この男に託された!! 第四学園大将、宝晶千縁ィィィ!!!!」
「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」
「また奇跡を見せてくれぇぇぇぇ!!」
「一年!! 俺たちの代わりに優勝をもぎ取ってやれええ!!」
今度は、会場が大歓声に包まれた。先ほど“悪童”を下した俺が、“奇跡”を起こすことを期待しているのだろう。
「期待通り。優勝してみせるさ!!」
「「「「「「「うおおおおおお!!」」」」」」
俺が高らかに腕を上げて宣言すると、ベンチと観客が雄叫びを上げた。
「さあ! そんな革命児、宝晶選手に対するは、第一学園次鋒! 富永英吉選手だァァァ!!!!」
「……体力を減らすことに集中しろ。“悪童”にかったくらいだ、疲弊させるしか勝ち目はないぞ」
「……わかりました」
第一学園側ベンチで副コーチがこっそり作戦を伝えてるのが聞こえたが、俺の超聴覚を持ってすれば丸聞こえだった。
「へぇ……?」
「宝晶選手は再び奇跡を見せるのかッッ!! それとも第一学園、圧倒的な力を見せつけることができるのか!? それでは試合──開始!!!!!」
「「「「「わあああああ!!」」」」」
〜〜〜〜〜
「……ちよ」
私、金城玲奈は舞台に上がるちよを見て、呟いた。
昔は仲が良くて、よく遊んだりもしたのに。
いつからか、二人の距離はかなり空いてしまった。
(中学の時は……よく二人で遊んだりもしたのに)
それも、“彼女”が現れるまでだったが。
あの頃の玲奈は、少なからず千縁に好意を寄せていた。
「どこから、間違ったんだろう……」
“彼女”のせいで、千縁は急に探索者を目指すことになった。中学から専門学校に行っている人も多いし、何より今年の世代は『黄金世代』で競合率が高いのに。
でも千縁は聞く耳を持たず、そこそこ偏差値の高い学校に行ける学力もあったはずなのに、大阪探索者学校の最弱校、第四学園になんとかといった成績で入学した。
そして、千縁が中二の時に急に探索者になるなんていうものだから、「一緒に行こう」と、私も第四学園に入学した。
でも、ちよの成績は思ったより悪く、態度のせいで他三学園に落とされた中級探索者の加藤に入学早々いじめられてしまった。
この学園で中級探索者となれば、絶対的な権力者だ。
「ねえ、玲奈はなんで宝晶に優しいの? 幼なじみだから? それとも……」
「なんでだろねぇ? あんなやつと仲良くしてもなにもないよ?」
「……」
新しく出来た友達も、皆ちよを馬鹿にし、それを庇う私も馬鹿にすることもあった。
そのうち私はちよを庇うことも無くなって、私とちよの交流は無くなってしまった。
「……ちよ」
「?」
「ぁ……邪魔」
今でも廊下でちよに会うたび、つい声をかけてしまう。でも、なんて言ったらいいかわからない。
結局いつも誤魔化して、会話を避けてしまった。
(私が……もっとちゃんと……話せてたら)
私がもっと、千縁の味方になってあげていたら、今頃どんな関係になっていたのだろうか。
“彼女”がここを離れたというのに、私はなにもできなかった。
結局、私はいつも言い訳してただけだったんだ。
ちよは今、なにがあったのか夏休み中に信じられないほど成長して、全国が注目する大舞台に立っている。
「……さよなら」
私が逃げてばっかりだったから。
私が守ってあげれなかったから。
もう彼は届かない場所に行ってしまったんだ。
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