第43話 互いに想定外
「そんな、訳が……」
「ほんとなのよ! 何が……何が起きてるの!?」
先輩の言っていることは本当だったらしい。
急いで闘技場へ向かってみると、電光掲示板には次の試合は第二学園対第三学園と書かれている。
「……っ!?」
つまり、私たちの次の相手は……
「全く第二学園はなーにやってんだか。まさか私たち第一学園が第四学園の相手しなきゃなんないなんてね」
「……」
第四学園。第一、第二学園が中級以上の探索者でひしめき合っている中、ほとんどの生徒が三年になっても下級探索者のままの落ちこぼれ高校だ。
(何かが……いる)
私は、第四学園勝利の背景に、何か、とてつもない何かを感じ取った。
まあ、“神童”の勘ってやつかな……。
「さっきの試合、ビデオありますかね?」
「えっ!? 第四学園のビデオ!?」
私の言葉に、先輩はとても驚いたように聞き直す。
それもそのはず、最弱の第四学園など、ビデオで対策せずとも勝って当然の相手なのだから。
「“悪童”のやつを倒したと言うことは、第二学園以上と見る必要があります。それならば事前学習を少しでもしておいた方が良いかと」
「うーん、そうなんだけど、第四学園なんて今までも、今回も相手にしてこなかったから……一つもないと思うわ」
まあ、そうか。第四学園が“悪童”に勝ったのは、おそらく単にとんでもなく強力な“個”が現れたのだろう。そして、それが突然となれば……
(私のような……)
“神童”並びに“悪童”……黄金世代と呼ばれる現高一、私と同年代だと思われる。
第二学園の“悪童”含めた全員を一人抜きすると言うのは、いくら私でもかなり疲れる。
それを成し遂げたであろう個も、今はそれなりに疲労しているだろう。第三第二の試合はきっと秒で終わる。じきに決勝は始まるだろう。
(完全に回復しきってないかもしれないけど……全力で挑む……!)
私は、少し卑怯かもしれないが、絶対に油断しないよう気を引き締めた。
「あっ! そうだ! 本当に最後の数分だけでいいなら……」
「……!」
「ジャジャーン! なんか歓声に釣られて行ってみたらすごいことになっててさ。画質悪いけどスマホのなら……」
「見せてください!」
先輩は、通り過ぎかけてから思い出したように言う。私は“決着”の瞬間を捉えた動画を見て、彼について考察を深めるのだった。
「宝晶千縁……!」
〜〜〜〜〜
「まさか第一とやるとは思っても見なかったが……最低限のビデオはある。想定外だが、出場者はこれを見て予習しておいてくれ」
「……これは」
「……」
「なんだよ、こいつら……全員が上級探索者かよッ!?」
「これは……本当に……」
学園長の渡したビデオに、他の四人は呆気に取られたように固まってしまった。第一学園三年には上級探索者が毎年五人ほどは出る。大会に出るのはそのメンバーだ。
「そして、“神童”だが……出る幕もなく試合が終わらされていて情報がない。……宝晶、“神童”をもし相手取るとなれば、お前の対応に全て任せることとなる……頼めるか?」
学園長は不安そうに言う。
だが、この言葉を吐いたと言うことは、俺が恐らく大将である“神童”のもとまでたどり着くと言うことを信じているからだ。
「任せてください。“神童”なんて大層な名前を超える自分の名前が思いつかなくて困ってるくらいですよ」
俺はもう勝ちを確信しているかのようにそういうと、武器を持って
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