第36話 第二学園VS第四学園 大将戦


「うっそだろおい! なんだあの一年!?」


「ちよ!! お前……!」


 俺が一度ベンチに戻ると、そこにいる全員が立ち上がって出迎えてくれた。


「うおおおおおお!! さすがだ、大将!! そんなに強かったのかよ!?」


「私なんて何にもできずに負けちゃったのに……。千縁くん強すぎない!? ずるいんだけど!」


「……すげぇ」


 会長の花澤さんや白城さん、剛田さんまでもが興奮して詰め寄ってくる。

 加藤は……トイレか? いねぇな。

 そんな中、学園長が近寄ってきた。


「宝晶……お前……スキルを……」


「ああ、いえ。あれは実際に存在するスキルの模倣ですよ。物理的限界までしか動いてませんし」


 まあ、最初はそりゃそう思うよな。基本的にスキルは一人一つなのにこんな何個もスキル(模倣)を使ってたら。


「あ、ああ、そうか……全部聞いたこともないものだったんだが……」


 学園長はつぶやくように言ったが、俺にかかれば丸聞こえだ。


(そりゃ、門の中で俺も初めて聞いたし……)


「……もしかしたら、お前なら……いや、なんでもない」


「わかってますよ、学園長」


 どことなく期待が感じられる学園長の声に、俺は堂々と言う。


「当然“悪童”にも……“神童”にも勝ちます」


「……お前は本当にやってしまいそうで恐ろしいよ」


 学園長は乾いた笑いを浮かべながらも、俺の肩に手を置いた。


「私は、勝って意味の無い数字なんかあげたいわけじゃない。だから……なんというか……無理はするなよ」


「……」


 滝上学園長は、本当にいい人なんだな。当時魔力値≒0だった俺を入れてくれたし、力をつけた瞬間利用しようとする輩とも違う。


「さあ! さあ! さあ!!」


 そこで、実況の大きな声が入る。


「行ってきな」


「ちよ……頑張れよ」


「兄貴、俺たちは勝つって信じてますから!!」


「「「「「頑張ってね!!」」」」」


「おう」


 誰かに頼られ、期待される。


(嬉しいな)


 期待されるとしんどいとも聞くが、俺はこういうのが好きだ。

 今までは笑われ、馬鹿にされるだけだったからな。

 俺はゆっくり、スタジアムへと歩いていく。


「なんと圧倒的力で第二学園の中堅、副将をも倒してしまった第四学園の革命児!? 宝晶千縁の入場だァァァァァ!!!!」


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」


 俺の入場に合わせて、実況があらためて紹介をする。


「革命児か……いいな」


「対するは!! 第二学園大将! あの“神童”と対をなすほどの力を持つ“悪童”!! 鬼塚蓮おにづかれんンンンン!!」


「……よぉ、あん時は世話になったな」


「……ああ」


 向こうサイドで第二学園長がギャーギャー言ってるが、鬼塚はなんとも思ってないようだ。第二学園長のヒステリーはいつものことなのかもしれない。


「あの女は出てねぇのか? この俺にあんな啖呵を切るような奴は珍しいんだが……」


「優香は一般人だ。探索者じゃない」


 俺の言葉に、鬼塚は目を見開いたが、それ以上は何も言わなかった。


「さあ! まさかの10年ぶりの大逆転劇を第四学園は起こすことができるのかッ!? はたまた“悪童”が第二学園としての威厳を見せつけるかッ!? 両者一年、大将戦──」


 審判が、思いっきり腕を振り下ろす。


「──開始だァァァァァ!!!!」

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