第33話 圧倒


「さあ! ついに第6試合! 第四学園は大将の登場だあああ! まずは第二学園三年、中級探索者の和田裕人わだひろとォォ!!」


「裕人ぉ!! これ以上の無様は許されんからなァァァ!!」


「ちっうるせぇなぁ……俺が負けるとでも思ってやがんのか?」


 第二学園のベンチから、第二学園学園長が怒号を挙げている。

 第二学園にとっては、最弱の第四学園なんて完封できなきゃいけない相手だと思っているのだろう。


(だが、それはちょっと舐めすぎだぜ?)


「続いて、後がない第四学園!! ここまでは大健闘を見せてくれたが、大将の実力は如何に──!? 大将、一年中級探索者、宝晶千縁ィィィぃ!!」


「ちよォォォ!! お前ならいけるぞォォ!!!」


「兄貴ィィィ!! 勝ってくださいねええ!!」


「一年!! 絶対に俺たちの仇を討ってくれぇぇ!!」


 俺の大将としての登板に、先輩たちは誰だあいつ、となる人も多かったようだが、その全員が喉が張り裂けんばかりの声援をあげる。


(ついに、ここまできたんだな……)


 大量の観客に、このステージ。いつか出場すると誓ったこの場に、来れたんだ。


「おいおい、一年って」


「第四学園の最高戦力って一年ばっかだよな。って言っても中級止まりだが」


「腐っても黄金世代って実感するよな。一年大将とか第一第二学園の真似っこにしか思えねぇぜ」


 だが、観客と第二学園ベンチはすでに第二学園の勝利を確信したように振る舞っている。

 それもそうか。ここまで奇跡的に二人を四人で落としたわけだが、“悪童”を含む後三人が待ち受けているんだからな。

 一人二人落とされようが負けるとは思ってないんだろう。


「さあ!! 第四学園は負けたら後がないぞ! 第六試合──開始ィ!!」


「まーた一年か。ったく一年ばっか脚光浴びてよ……馬鹿馬鹿しいんだよっ! 【綱身化】!」


 開始直後、和田が全身を鋼鉄に染め上げていく。

 その間、俺は鉄の剣を取り出してプラプラと手首を動かしておく。


「ただの鉄の剣でこの身に傷一つつけられると思うなよ!」


 なるほど、タンクタイプか。面倒だな。


「ただの剣じゃないぞ。ほら」


「何を──」


 ジュバンッ!!


「──うわアアアアア!?!?」


「「「「!!!!」」」」


 俺が剣を薙ぐと同時に、おおよそ金属が奏でる音じゃない音が和田の体から発せられる。


 そして、を見て、お互いのベンチの生徒たちが全員立ち上がった。


 一瞬にしてジャラジャラと伸びた俺の【綱身化】した和田の右腕を切り飛ばしたからだ。


「ばっばかな!!」


 第二学園学園長は思わず叫ぶ。

 和田の【綱身化】は、上級探索者ですら一撃で突破するのは厳しいというのに。それをこの一年は、いとも簡単に切り飛ばしたのだ。


「う、うわああああ!?」


「どうだ? なかなか貴重な体験だろ? その腕が切り飛ばされるのは」


 俺はニヤリ、と笑って今度は関節部が固定されてしなりをつけた蛇腹剣で床をバチンッ! と叩く。


「ヒッ!」


「まだやるか?」


 俺はそう言って、ゆっくりと和田へと歩みを進める。


「う、うぁ……」


 ゆっくりと近づいてくる俺の恐怖に、和田は叫び声を上げる。


「こっ降参だ!! 頼むっ! 降参だぁぁ!!!」


「もう終わりか……だとよ、審判」


「……はっ! で、では和田裕人選手の降参を確認! よって勝者は……第四学園、宝晶千縁!!」


 俺はその宣言を聞いて、剣を持つ手を掲げる。



 会場は静まり返っていた。

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