第31話 相性不利


「さあ、第二学園の先鋒を討ち取った剛田選手を倒した本田選手に立ちはだかるは第四学園、一年、中級探索者の加藤俊介だァァァ!!」


 第四学園で1年の中級探索者と聞いて本田はピクッと反応したが、すぐにポーカーフェイスに戻って大剣を分離する。


「それでは第四試合、開始!!」


「【ファイアバレット】!」


「ふん……!」


 加藤は初手で炎の弾丸を3つ放つ。

 だが、本田は意にも介さず一つを転がって避け、一つをジャンプで避け、最後の一つを切り捨てて接近する。


 魔法を切り捨てたと言うことは、やっぱりあの剣は魔道具か。何円したのだろうか。


「っ!」


「試合中に焦るな。さっさと次を放て!」


 一瞬加藤は動揺するも、振るわれた剣を回避してカウンターを放つ。


「【フレイムスピア】!!」


「チッ!」


 加藤の放てる最大火力の魔法に、流石の本田も一旦距離を離す。


「魔法使いね……悪いな」


「あ?」


 本田は双剣を大剣に戻すと、加藤に接近する。


「【ファイアランス】!!」


 加藤はそれに対し、炎の槍を作り出して打ち合う。


「魔法使いが……!?」


 本田が膂力で押し切ろうとしたその時、炎の槍が空気に溶け込んで熱波を生み、バランスを崩した本田の皮膚を焼きにかかる。


「何っ!?」


「喰らえ──【フレイムスピア】!!」


 後退しようとする本田に、加藤は必殺の間合いで【フレイムスピア】を放つ。

 本田は避けようとするも、間に合わない……


 チュドオオオン!!


「「「…………」」」


「……」


 会場が緊張で静まり返る。

 どっちが勝ったのか……


 結果は。

 煙が晴れる。そこに見えたのは……


「ぐっはぁ、……!」


「お前……やるな」


 大剣に突き刺された加藤と、薄い膜に守られている本田だった。


「加藤!!」


「キャアア!!」


「よくやった本田!!」


 観客たちが一斉に歓声を上げる。

 だが、本田もアーマーのようなものを纏っているが、流石に大ダメージを受けたようだ。


「まさか俺の【マジックアーマー】を破るとは……中級の中でも中々強いじゃないか……何故第四学園に?」


「くっ……そっ……!」


 加藤が倒れる。


「まだだ……! 俺は、まだ……ぐっ」


「そこまで! 第四試合、勝者は第二学園、本田義道!」


「「「「うおおおおおお!!」」」」


「「「……」」」」


 加藤がベンチに運ばれてくる。治療はされたが、まだ気絶してるようだ。


「花澤……いけるか?」


 学園長は、極めて冷静に言う。

 こういう雰囲気には慣れているのだろう。


「はは、無理言わないでくださいよ学園長。俺は加藤くんより魔法も弱いし属性も水ですよ?」


 花澤さんはおちゃらけたようにそう言って……顔を引き締めた。


「覚悟はできてますけど」


「……ああ。行ってこい。三年代表の意地を見せてやるんだ」


「先輩」


「ん? どうしたんだい千縁くん」


「あのアーマー、加藤の攻撃で左肩に穴が開いてます。恐らく修復不可なレベルでダメージを受けてますし、魔法使いじゃないので魔力がなく修復出来ないんでしょう。次の試合でも壊れたままのはずですし、そこを狙ってください」


 (見た目は普通に完全な膜が形成されているように見えるが……千縁くんはこの距離で煙の中、どこにフレイムスピアが当たったのかを見ていたって言うのか!?)


「あ、ああ。ありがとう。自信が出てきたよ」


 生徒会長である花澤彰人は、ちよの能力スペックに度肝を抜かれたのだったが、なんとかそう、絞り出したのだった。

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