第30話 次鋒戦


「ったく……先に言うが、俺をあのバカと一緒にしない方がいいぞ」


「……」


「ったくどいつもこいつも……」


 本田は持っていた大剣を半分に分離すると、双剣で盾のガードを破りにかかる。


「……っ」


「ほら、どうした? きついなら盾を二つに分けてみたらどうだ? 可変式にしとくと後々楽だからおすすめする。俺は元々盾使いだったしな」


「……」


 本田の猛攻は、着々と剛田さんの体力と守りを削っていっている。


「へぇ……うまいな。盾の対処が完璧だ。魔力も使ってないから反射もできなさげだし、体力は圧倒的に相手の方が多いだろう」


 あながち、本田が盾使いを経験していると言うのは嘘ではなさそうだ。


「剛田っ! 焦らなくていい! ゆっくり機会を伺って、体力を消耗させるんだ!」


「剛田ー!! がんばれぇぇぇぇ!!」


 こっち陣営は剛田への応援で埋まっていた。だが、現実は甘くない。


「ふぅ……お前、センスあるな。すごく昔の俺に似ている……だが、これで終わりだ!」


「……!?」


 本田は、ここぞというところで一度も見せてこなかった切り上げで盾を持つ手を跳ね上げる。

 盾の重さもあって、剛田さんはひっくり返るようにして転び、その手から盾が地に落ちる。


 そして、一瞬にして変形が完了した大剣は、剛田さんの脇腹を串刺しにした。


「っグゥ……!!」


「おお、喋れたんだな」


 そこで、審判が止めに入って試合が終了する。剛田さんは顔色も紫になっていて、半ば意識を失いかけているからだ。


「その場所の痛みを忘れるな。盾は、そこを守るように持つんだよ」


「……たすか、る」


 剛田さんの返事に少し驚いたようにした本田だが、すぐに肩をすくめて最初の位置に戻って行った。


「第三試合の勝者は、第二学園、本田義道ィィィィ! 10分に及ぶいい試合だったぜぇ!! 俺たちをもっともっと熱くしてくれよォ!!」


「「「うおおおおおおお!!」」」


「お前は……相手にアドバイスしてどうするんだ!」


「まあまあ……国全体で見れば優秀な探索者が増えるのはいいことじゃないですか。試合にも勝った上でですし」


「……ちっ」


 今度は第二学園側が湧き上がる。先鋒が一瞬でやられて、不安になっていたのが見えていたが、今ので安心したようだな。


「剛田……よく頑張った。帰ったら剛田の祝勝会だからな」


「……はい、先生」


 ベンチで目を覚ました剛田さんを尻目に、加藤は立ち上がる。


「……ちよ」


「えっ俺!?」


 俺は思わぬ加藤からの呼びかけに素手びっくりして素っ頓狂な声をあげた。


「前は悪かった」


「あ、ああ、別にいーよ、お前がなんか言っても俺の心情は変わんねーし」


「……」


 なんだ? 何が言いたいんだ? と思ったが束の間、加藤は俺に宣言した。


「……必ず勝ってくる。いつか、お前に追いつくからな。首を洗って待ってろよ」


「……」


 少し驚いたが、こいつはこいつなりに前の自分とけじめをつけようってわけか。

 ……許すわけじゃないが、今度教えを乞うってんなら教えてやってもいいかね。


「さあ! ついに第四試合が始まるぞ!!」


「「「加藤くん、頑張って……!!」」」


 我ながら甘いかとも思ったが、別に一人増えたって特別苦労するわけじゃないし、俺は俺の思うがままにやればいいだろう。


 俺は、誰の影響も受けない、流されない。

 俺の道は、誰にも邪魔させない。



「今の俺には、“力”があるからな」

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