二章“憐れみ掠する地獄の王” 悪鬼編

学園対抗祭編

第27話 学園対抗祭開会


 そして、ついに10月1日。


「さあ! 今年もついにこの季節が来たァァァ!! 大阪四校対抗学園祭の始まりだァァァァァァ!!!!」


「「「うおおおおおおお!!」」」


 俺たちが会場に入場すると、会場が歓声に包まれる。

 観客席は、一席の空きもなく満席だった。


「流石だな……」


 それがこの交流戦の人気を表していた。俺も、去年まではテレビで見る側だったのだが、入学半年ほどで出場出来るなんて思っても見なかった。しかも、大将で。


「……あ!? お前……!」


「ん?」


 俺たちが整列していたとき、すれ違った一人の生徒が俺を見て驚きの声をあげた。


「……あ! 劇場で暴れてた奴!」


「テメェ、忘れてやがったな!?」


 そう、そいつはあの時劇場で出会ったあの鬼みたいな青年だった。

 その制服は……第二学園だったのか!?


「ねぇ、もう始まるんだから問題起こさないでよ!」


「お、おうわかったわかった……?」


 その青年は、同じ列の女の子……あの時の子だな。に諭されて列に戻っていく……最中、怪訝そうに呟いた。


「第一学園の隠し球かなんかじゃなかったのか……?」


 第二学園の奴の攻撃を受け止めたってわけだったのか……そりゃ驚くわな。

 でも第一学園の隠し球ってのは過大評価しすぎじゃ……


「ねぇ、ちより君、今の人……知り合いなの!?」


 そう考えていると、先輩の白城春しろきはるさんが驚いたように聞いてくる。


「え、いや知り合いってほどじゃないですけど……以前一回突っかかられたことがあって……」


「えぇ!? それ無事だったの!?」


「え、えぇ? そりゃ別に……」


 俺は、過剰心配する白城さんに大丈夫だと伝えて列に戻ろうとして……後ろから聞こえた言葉に足を止めた。


「嘘……あの“悪童”が何も?」


「“悪童”……!?」


 “悪童”といえば、今年の対抗戦のメインと言われる“神童”と対をなす、根っからのワル(噂によれば)じゃねぇか! 


「なるほど、通りであんな性格だったわけだ……」


「えーでは! これより! 大阪を代表する第一学園から第四学園の学園対抗祭を開催する!!」


 そうこうしているうちに、第一学園の学園長、柏田美波かしわだみなみが開催宣言を行い、それに合わせて第二学園から第四学園までの学園長も儀礼剣を交差させて掲げる。


「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」


 観客と選手は同時に湧き上がった。


「さあ! 探索者なら御託はいらないな!? 第一種目はダンジョン探索戦! 選手は用意を!」


 実況がそういうと、俺たち対抗戦組は控え室へと歩を進める。

 その途中、一人の綺麗な金髪をした少女を見かけた。


(あれ……?)


 振り返るも、彼女はすでに控え室へと入ってしまっていた。俺は、彼女が消えた方向を見つめる。そこには、第一学園控え室と書かれていた。


「あれは……」


 間違いない。

 ずっと憧れてきた存在。



 “神童”──神崎美穂かんざきみほだ。

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