第22話 ショッピング


「あ、千縁さん!  無事だったんですか!」


「え? ああ、昼には帰るって言いましたよね?」


 次の日、俺がギルドに行くと瑞稀さんが泣きそうな顔で出迎えてくれた。


「本当に帰ってきたぞ……」


「逃げ切れたのか……」


 上級パーティらしき人たちが何やら勘違いしているようだが……まぁ、瑞稀さんが誰かに伝えてくれたのかな? 一人で突っ込んだバカが一人いるって。


「なんか勘違いしてるな! これでどうだ!」


 俺はそういって、岩晶ゴーレムの人差し指を30本出した。


「「「「……」」」」


 一瞬で喧騒が静まった。

 へっどうだ。速攻で取ってきてやったぜ。


「マジックバッグか? いや、そもそもどうやってあれを一人で……」


「おい、まじかよ、斉藤さんを一撃で吹き飛ばしたってまじだったのか……」


 誰かが声を潜めて言ったのを聞いて、瑞稀さんが再起動した。


「えっと、はい、確認しますね、はい」


「うん?」


 しばらくして、重吾さんが出てきた。


「おま……これは確実にギルマス行きだな……」


 『アレクシスの牙』はすでにまたダンジョンに行ったらしく、最高権は斉藤さんのものとなっているらしい。


「早く換金してくださいよ〜俺用事あるんですよ〜」


「お、おう、そうだな」


 重吾さんはそういうと奥から小さなケースに入った80万を持ってきてくれた。


「まぁ、素材集めだから何にせよ依頼は達成だな、どうもありがとう」


 重吾さんはちょっと引き気味にそういった。


「しかしどうやって集めたんだ? まさか全部倒したのかよ?」


「あ、はい、そうです。魔石も買い取ってもらえませんか?」


「……」


 俺がそう言って三十を超える魔石を取り出すと、重吾さんは本気で引いた顔をして「こんなバケモンと戦わされてたのかよ……」と呟いた。失礼な。



〜〜〜〜〜


「っし、いい感じ。選んでくれてサンキュー、悠大」


「おう、俺に頼む前に買わなくて本当によかったわ……」


 ショッピングモールにて。俺は悠大に一緒に服を選んでもらった。


「そんなにひどかったか?」


「言語化できないくらいにはセンスがなかったわ!」


 俺は自分のセンスに自信がなかったので手伝ってもらったんだが……そこまで俺のセンスって悪かったのか?


 くっ……これも何年も門の中で過ごしたせい……じゃないよな。


「あ、そうだ、装備屋見ようぜ。臨時収入も入ったし」


「え? いいけど」


 俺は服をマジックバックに入れ、悠大を誘って装備店に寄る。


「昔は……ってかたった数週間前はこんな店で買い物できるなんて思っても見なかったよなぁ……」


「俺はまだ買えないけどな……いいなぁ魔道具の武器。値段もいい値段だが」


「どれだ?」


 俺は悠大の持つベルトを


アリゲータベルト……消費魔力値8%軽減 値段800万


「800万! 高ぇなぁ」


「いつかは買いたいが……まずはちよに追いつかなきゃ手も届かねぇな」


 悠大のスキルは知っている。当たりスキルだが、魔力値が低すぎて使えないと言っていたな。


「そんなことねぇぞ?」


「え?」


 俺はベルトを即金で買う。


「俺に追いつくくらいまでくればこんなの即金で買えるし。ほら」


「えっ? 何、くれんの?」


「おう」


「……は?」


 悠大は、ポカンとして聴き返す。


「約束破っちまったからな。それで俺だけ強くなっちって……色々、裏切ったみたいでごめんな」


「い、いや、気にしてねぇから!! これは流石に……」


「スキル的に俺使えねぇしさ。ほら、悔しかったら早く追いついてこいよ」


 俺の言葉に、悠大は涙を浮かべて頷いた。

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