第17話 金稼ぎの方法


「で、金を稼ぐ方法がわからないから、いちいち私に聞きにきたのか?」


「お願いします!! そんな大量に必要ってわけでもないんです!! どうか学園長のご知恵を!!」


 俺は今、学園長室にきていた。

 一人で考えてたって、ずっとこんな生活をしてきた俺に答えが見つけれるわけがない。俺はあの地獄ダンジョンで力を手に入れたが、あいにく知能は授かってないからな。


「君はそんなことで逐一土下座をするな!! 探索者にとって舐められることがどれだけことか、知らないわけじゃないだろう!?」


「俺は一介の下級探索者ですよ!? 何してたって舐められますから!」


「はぁぁぁぁぁぁ!?!? 下級探索者ああああ!?」


 学園長から、今まで聞いたこともない……というか、絶対美人が出していい声じゃない叫び声が発される。


「おまっ、下級探索者とか、詐欺も大概だろう!?」


「学園長かって知っているでしょう!? 俺が強くなったのはほんの最近なんですよ! つい最近までスライムハンターでしたからね!?」


 下級探索者は、申請すれば誰でもなれる。つまり、ずっと下級探索者のものは才能がない、ということだ。なので下級探索者ってだけで一般人にすら馬鹿にされることもある。

 中級探索者になってようやく一人前の探索者だ。だから第四学校ここで最低中級探索者を目指しているわけだが。


「はぁ……全く持って信じられんな。実力を隠していただけじゃないのか? この学校に近づいて何か企んでいたとか……」


 狙いがない、とは言えないから強く否定できない……。


「い、いやそんなことないですって! マジで夏休み頑張ったんすよ!! もうほんと死ぬ思いで!!!!」


「あ、ああ……分かった、分かったから落ち着け!」


 俺に言わせれば、努力を疑われたようで腹も立つ。こっちじゃたった1ヶ月だったのかもしれないがそれを訂正する義理もなければ、否定される筋合いもない。


「絶対にそんなことが起きるとは思えないんだが……」


 学園長は納得いかない表情でなにやら呟いているが、やがて大きなため息をつくと、俺に向かって一通の手紙を差し出した。


「はぁ……これを渡せばすぐに昇給試験が受けられるはずだ。それで探索者ランクを上げて、魔石を買い取ってもらえばいいだろう」


 探索者協会で魔石の売買。

 俺も考えたんだが、今の俺は下級探索者として登録されている。そんな俺がレッサードラゴンやらヒュドラやらの魔石を持っていったら、まず間違いなく捕まって尋問あるいは拷問されるだろう。

 順当に考えれば盗んだと考えるのが自然だからな。


 かといって昇給してから売ろうにも、昇級試験は月に一度しか行われない。

 それでは今週末に間に合わないので、どうしたもんかと考えあぐねていたところだった。


「流石学園長!! ありがとうございます!!」


「ああ……君の実力なら間違いなく中級探索者にはなれるだろう。そしたらグリフォンの魔石くらい一人でも売れるはずだ。」


 俺は紹介状を受け取ると、探索者教会へダッシュする。


「はぁ……全くあの子は忙しないもんだねぇ……」


「全くです。いつも授業でも斜め上のことを軽く成し遂げますし……彼なら本当に学園対抗戦、勝てるかもしれませんね……」


 学園対抗戦の初戦は、決まって第一学園対第三学園、第二学園対第四学園だ。

 初戦から差がある戦いのように思えるが、開催側からすれば第一対第二、第三対第四のように、初戦で第一第二の決戦を終えてしまうと盛り上がりに欠けて困るのだ。

 それに、ここ10年間学園名は変わってない。決勝戦で第一学園対第三学園なんてやっても、先鋒の5人抜きで第一学園が勝つのは見えている。


 いくらちよが強いと言っても、そんな第一学園の5人を実質一人で倒すなんて不可能なのだ。

 だから鈴木担任は、3位4位決定戦での、そう言った。

 滝上学園長も、そのつもりで返す。


「そうですね……今でもあの子のことは全く意味不明よ。何がどうなってどんなスキルに目覚めれば1ヶ月であんなことになるのやら……」


 ただ学園長は言葉とは裏腹に、それ以上のを、ちよの内から感じ取っていた。


 見過ごすわけにはいかない、を……




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