第16話 アイドルからのお誘い


『ちよ君、今週日曜の昼空いてるかな?』


 学生ソロアイドル、飛彩優香。以前、割と本気でアイドルを辞めようと言っていた同級生で、俺の勘違いとはいえ、逃走の手助けをしてしまったのだ。


 その時に、面倒だからさっさと逃げようと思って、咄嗟にいつでも愚痴聞くからって言ってしまったのが原因で連絡先を交換した。


『優香仕事は? サボる?』


『日曜はないわよ!! 私が毎日毎日サボるわけないでしょ!! てか昨日のテレビ出てたでしょーが!』


 この1週間はずっと連絡を取り合っていて、今では「優香」「ちよ君」と言うくらいには仲良くなった。まあL○NEでだけど。

 まさか俺がアイドルと出会うなんてな……しかも連絡先を交換できるとは。

 テレビでも超級探索者になった人が突然様々な縁に恵まれたって話を聞いたけど……強くなったら縁に恵まれる法則とかあんのか?


『俺テレビ探索者関連しか見ないからさ。ごめん』


『なんでよ! 共犯者でしょ!!』


『いや、勘違いだったんだって! あと、それ優香を見る理由に繋がらなくね?』


 ……ポンコツアイドルなのが残念だが。


 アイドルって言ってもまだ成り立てで、売れ出したところだからかもな。やめる宣言聞いた時は早すぎかって思ったわ。


『まあ、日曜は空いてるけど。来月の学園交流祭に向けて特訓したいかな』


 とりあえず、それとなく断っておく。

 連絡先交換できたことに大喜びのくせにデートは蹴るのかって? だってそりゃ、とはいえ、只のキモ男だった俺からすれば女子との連絡先交換が夢の一つだったから交換しただけで。


 デートなんてハナから諦めとったわ。自分がデートしてるところが想像できないって言うのもあったけど。いかん、泣けてきた。

 夢の一つだったから連絡先交換しただけで。デートなんて夢にも設定してなかった。


「それに……」


 これはデートというよりなんか愚痴でもあるから、それを聞いてほしいってことだろうな。そのために連絡先交換したんだから。


 だから、交換したといえば交換したというだけで、交換を目的とした交換、とでもいえばいいのだろうか。ややこしすぎだろ。


『1日くらい付き合ってくれてもいいでしょ! まだ3週間あるんだし!』


 いやまさか食い下がるとは思ってもなかった!!

 仮にもアイドルなんだからそんな意地汚いような真似はしないと思ってたわ!プライドないのか!?

 あぁ、そうだこいつ残念アイドルだったな。

 学生だししょうがないのか? まだ学生なのに売れてるのがおかしいんだよな、本来。


 正直面倒だが、約束して連絡先交換した以上そう食い下がられたら断れない。


『分かったよ。行くから』


『ほんと!? じゃあ12時に大舎駅前の噴水集合ね!』


『はいよ』


 日曜日、約束してしまった……。

 門でクソ野郎イケメンに女の口説き方とかなんだとかを強制的に教えられたが、こいつに通用するところが想像できん。大人用だし。


 てかまず成功するビジョンが見えねぇわ。イケメンだからできるに決まってんだろうが。

 そう考えるとマジで意味ないこと教えられたな……やりたくもないし。


 いや、女子にキョドらなくなっただけで大成長だよな、うん。


(ちょっと待てなんで口説くことなんか考えてるんだ……バカだろ……)


「しかし優香とデートかえ……流石にジャージで行くわけにはいかんよな……」


 俺のボロアパートには、ジャージが二着、それ以外に服がない。

 一人暮らしで、生活ぎりぎりの底辺生活送ってたからな。服買う余裕なんてなかったんだわ。

 過去の話のように言ってるが、今もボロアパートで金欠なのは変わらない。


「まずは服買うためにも、金稼がなきゃな……」


 俺はまず、金を稼ぐ方法について考えることとした。

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