第14話 選抜
うちの学校は、というよりどこも大差ないと思うが、探索者学校というのは基礎教育2時間に模擬演習……つまり戦闘訓練だな……が4時間で1日を構成している。朝2限動いて2限勉強、昼から2限自主特訓って感じ。
ちなみに勉強ってのもダンジョンやダンジョンで発見されたアイテムの勉強、スキルの勉強といったものばかりだ。
今日も朝から活気よく皆特訓をしている。
「今日は一段と気合入ってんな」
まあ、それもそうか。だってそろそろ……
「はい、注目〜」
一限が終わってすぐ、担任の鈴木が手をパンパンと鳴らしながら号令をかける。
このタイミングということは、十中八九あれだろう。
「来月頭、4校合同の交流大会が開かれる!」
来たか! 大阪四校対抗学園祭!
毎年10月初めの土曜日に行われる交流戦で、内容はこの第四探索者高校を含む4校で勝ち抜き勝負を行う、といったものだ。
トーナメント制なので実際に戦うのは2校だけなのだが、外部からの観客も多く、決勝の大将戦なんかはテレビ中継で視聴率50%弱を達成するほどの盛り上がりだ。
そして、俺が最も狙っていた行事の一つである。
(派手に優勝すれば……きっとこの学校も俺も、かなり有名になるだろう)
心躍る接戦に、生み出されるドラマ。
その両者が国民を沸き立たせる。
俺が探索者学校の名門が揃いしここ、大阪に来たのも、この四校対抗学園祭で活躍することを夢見てきたからだ。
……まぁ、当初の予定なら3年までに出るのを目指してたんだが。
本当に実現するとは、思ってもみなかった。
え? 選抜確定してるみたいな言い様だって? そりゃぁこの学校でいちばん強い加藤を倒してんだから、絶対呼ばれるっしょ。呼ばれる……よね?
まぁいい、この力で四校最弱と言われたこの第四高校を優勝させてやる……!
俺は、目立つのが目的だからな。
「そして、その出場者が昨日の会議で決まった! なんと今年はこのクラスからも出場者がいるぞ!」
大量に……
鈴木がポツリと言ったのを、俺は聞き逃さなかった。
「まず、田中三郎! 前へ!」
「おっ俺!?」
「わぁ! 田中くん、頑張って! 最近毎朝早くから森山くんと特訓してるの、皆知ってるから!」
「えっ!?」
この一週間で多少の好感度と信頼は取り戻したらしいな。
毎朝早くに校庭に来て、竜二……苗字森山っていうのか? と訓練をする姿が他のクラスメートに好かれたらしい。
曲がりなりにも、この学校の生徒は探索者だからな。訓練する姿に惹かれるのは、俺も同じだ。
「その森山も選抜されている! 前へ!」
「うおっ! まじか! やったぜ……遂に俺があの4校交流戦に……!」
次いで竜二も呼ばれ、喜びを隠しきれず三郎とハイタッチをしている。
「そして、加藤俊介! 中級探索者のお前に、
「……ッ、はい」
お? 久々に来てたらしいな。まぁ、自分が呼ばれるであろうメンバー発表を欠席とかしないわな普通。
「そして最後……宝晶千縁! 前へ」
鈴木は俺の方をチラッと見ると、ブルッ、とした……ように見えた。
あの後学園長から話を聞いたのか?
魔石が本物って分かってくれたなら、俺が上級探索者レベルの力を持っていることも分かるはずだ。だからどう扱うか手をこまねいてるのか?
猛獣じゃあるまいし……
「はい」
「1年2組からはこの4人が出場する! この学校が始まって以来、1年から4人も出るのは初めてだ! 代表となった彼らに拍手!」
「うおおおおお! 千縁達なら今年こそ勝てるって信じてるぞ!」
「私たちの分まで頑張って勝ってきてね!」
「来年はその座は俺のもんだ! 首洗って待っとけ!!」
ワーワー、と俺たちに拍手が送られる。
加藤を除いて、俺たちの表情が無意識に緩んでいく。
あと、3人目の君。来年もこの座は俺のもんよ。譲らんぞ??
俺は残りの時間をどのように活用するかを考えながら、悠大達との特訓へ戻った。
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明日は一挙二話投稿!(朝9:00に追加投稿)
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