第8話 退学阻止
「何してるんですか?」
「いえ、あのですね……」
「あ! お前は! 魔石を持って来ず欠席していた宝晶千縁じゃないか!」
学園長の言葉に、俺が弁明をしようとするが……鈴木がそれを邪魔する。
「ん? そうなのか? 魔石を持って来なければこの学校にはいられないと入学式で言ったはずだが……」
学園長の目が据わる。
「いえ! 違いますよ! ほら、これです!」
俺は持ってきたマジックバッグから直径が指ほどある翡翠色の魔石を5つ取り出した。
「……!?」
「グリフォンの魔石です…魔石値は235。5つで1000を超えますよね?」
マジックバッグとは、皆の思う通りダンジョンで稀に算出される、見た目の何倍も物が入る鞄だ。
まあこれは俺が作ったものだが、それはどうでもいい。
「退学は勘弁してください! 遅刻してしまったことは謝ります! なんでもしますのでどうか……」
「がっ学園長……」
「……」
学園長は言葉を発さない。よほど怒ってるのだろう。だが、まだ退学とは言われていない。まだチャンスはある……!
「これもつけますから! 退学だけは!!」
俺は懐から拳大の赤い魔石を取り出した。
「……は?????」
なんか鈴木がガクッと気を失った。
学園長から発される怒気のオーラにでも当てられたのだろうか。
俺に感じられないのは、俺が未熟すぎるからか……強すぎて感じないかだな。まああれを乗り越えたんだし、前者ってことないと思うけど……驕りは最もやってはいけないことだ。
「えっと……千縁君だっけ? これ、どこで……」
学園長が指をプルプルさせながら赤の魔石を指差した。
まさか、盗んできたと疑われてる!?
いやでも確かにそうか。このサイズの魔石を手に入れれる生徒がいたら覚えてるはずだもんな。てか、この学校に入ってないかもしれない。
どうやって俺が夏休みに修行したことを伝えるか……
「えっと、夏休み一日中ダンジョンで修行をしまして。その時になんとかして倒したんですよね。おかげでかなり強くなれた気がします。どうか退学だけは!」
「わ、わかった……君が倒したんだな?」
「はい!」
学園長は胸に手を当て、ふぅと息を吐くとキリッとした顔をした……気がする。
俺今土下座してるから学園長の顔わからんし。てか顔知らんわ。始業式でも1番後ろの席だったから見えなかったもんな。
「わかった……なら試験を受けてもらう。それに合格できたら、2学期から学校に戻ることを許そう」
「……!! ぜひ! ぜひやらせてください!!」
あぶねええええええ!! どうやら、試験に受かれば復学できるようだ。
探索者学校の試験といえば、身体能力試験。スキルを持つ場合はそっちも見られるわけだが……そっちはあんまし見せたくないんだよな……。
「……どんなスキルを持ってるのかな?」
これには明確な、用意した答えがある。俺の上がった身体能力も誤魔化せるし一石二鳥よ!
「身体強化系です!」
身体強化系。魔物を倒し魔力を吸えば勝手に肉体が強化されるため不遇とも言われるスキルだ。だが、一般的に魔力を吸って強くなった状態から更に、身体強化を発動できるということは汎用性が恐ろしく高いことを表している。
「……じゃあ、これを握ってくれるかな?」
そう言って学園長が取り出したのは、握力測定器だった。
握力か!!
「……これは、150kgある。これを最大まで片手で握れたら復学を許可しよう」
おお、思ったよりも簡単だ!! まあ、ちゃんと魔石も出したし、ちょっと遅刻しただけだもんな、うん。これくらいが落とし所だろう。
私学っちゃ私学だからワンチャン退学食らうかもと思ったがなんとかなったかな。
「ありがとうございます! でも、先生……」
「ん? 150kgくらいはいけるはずだができないとでも……」
俺は焦って身体能力を全開にし、握力測定機を握りつぶす。
だがそんな焦ってる様子を見せないように、ゆっくりと言った。
「いえ、学園長、150kgは、舐めすぎですよ」
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