第2話 探索者学校の劣等生


「よお、ちよ! まーたスライムでも狩ってたのか??」


「なあ、ちよって全く、女みたいな名前だよなぁ、ギャハハハ!!」


「怪我しなくてよかったなぁ! ギャハハハ!!」


 で、問題がこいつら。クラスメート。

 俺は言った通り、成績最下位の劣等生だ。


 だからまあ、簡単にいうと蔑視されてる。


 探索者として成功すれば、莫大な地位と名誉、金に、異性。全てが手に入る。

 逆に言えば、成功する見込みがない奴は、余程顔が良くない限り蔑視されるのだ。


「ああ……心配してくれてありがとう、加藤。」


「加藤様だろーが! 敬語使えやこのクズが!」


「そうだぞ劣等生! 加藤さんは中級探索者様だぞ!!」


「クズが話せる相手じゃねーんだよ!」


 だったら絡んでくるなよ! 無視したら無視したで殴りかかってくるくせに!


 だが、加藤の実力は本物で、手首だけでもあしらわれるだろう。

 入試1位だったらしいしな。


 俺は、バコンッ! と頭を叩かれた。


「いって!」


「ギャハハ! こいつ痛いんだってよ! 弱すぎ!?」


「ギャハハハ!! 探索者なんて無理だろ、諦めろよ!」


 いや、お前ついさっき中級探索者とか自分で自慢してたじゃねーか! そんな奴に叩かれたらシャレになんねーんだよ!!


「……すみませんでした」


「ギャハハハ! 言い返してみろよ! なあ!?」


「そんな度胸あったらもっと強くなってるて!! 無茶言うなよ!」


 くっそ……今のビンタ頭に響くな……。


 取り巻きのアホどもが騒いでるけど……加藤達のいう通り、俺は弱い。

 反抗する力もなければ、俺の言い分を聞いてくれる人もいない。


 学校という小さな社会の中でも、実力主義の風潮が浸透しているからだ。

 俺はその場を惨めに去ることしかできなかった。


 ……いや、一人だけ友達がいるか。


「ちよ……大丈夫だったか?」


 席が隣の男子……岩田悠大いわたゆうだいが、俺に気を使って声をかけてくれる。


「ああ……ちょっと頭に響いたわ、サンキュ」


「……本当に、すまない。俺にはどうしようもなくて……」


「いいよ、わーってる」


 悠大は、俺の唯一の友達にして親友。成績は下から2番目だ。

 席は成績順で決まるって……いつの時代だよ。

 閑話休題。


 皆が加藤と一緒になって嗤って来る中、悠大はこっそりと気遣うような言葉を投げかけてくれる。

 勿論最初は俺も、「ああ……俺が気に病んで居なくなったら次は2番目のお前だもんな……」とか嫌味を言ってやったが、そんな最低ことを言った俺に、ずっと優しくしてくれた悠大は今では唯一にして最高の友達だ。


「おらお前ら席に着け〜HRだぞ〜」


 そんなことをしてると、教師が教室に入ってくる。


 教師は、俺をちらっとみると、魔石を回収する。

 今日は1学期最後の日。7/31日。

 今月もなんとかギリギリ集めれたか……


 俺の心の中は、それだけで1杯だった。


「よし……全員ちゃんと集めて来たな。さて、明日から夏休みが始まる」


 担任の教師、鈴木悠真すずきゆうまがそう言うと同時に、クラスメートが色めき立つ。


「まぁ宿題はいつも通りの魔石1000スライムだけだが、その分しっかりと修練しとくように。成績不振者は特にな。」


 鈴木は俺たちをチラッとみると、そう言って退出する。


「はぁ……二学期大丈夫かな」


「まぁ、そういうなって。夏休みだし、一緒に魔石集めに行こうぜ。ちよと2人ならすぐ2000個集まるっしょ」


「……そうだな。さっさと集めて遊ぶぞ!」


 俺はつい憂鬱になる自分を誤魔化すように、悠大と拳を合わせた。






















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今日と明日は一日2話投稿!!

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