五日目・夜ー1

「…どうしたんだろう」

私は、その次の日になっても、彼の背中を探していた。丸まっていて、弱い、儚い、そんな雰囲気を漂わせる。そんな美しく、得体のしれないその背中を。

きっともうここに来ることは無いのだろう。そんな根拠のない確信があった。

彼は、ここに帰省に来たと言っていた。その詳細の真偽がどうであれ、いつか帰る意思がある、その意思表明には間違いなくなっているのだから。そして、いつも食い入る眼で星を見ていた彼が来なくなる理由なんて、来れなくなった、それ以外考えられなかった。

「寂しいのかなあ。たったの二日ぽっちしかあってないのに」

悪い癖だ。一緒にいた年数がない人でも過剰に一人で期待して、そして当然崩れる。ましてや今回は子供相手に。人生何度も経験してきたことだが、何回なったとしても心の傷は負い慣れるようなものではなかった。

「ふう」

テトラポッドに腰かける。落ち着いた、というより、何も考えなくなった。そんな感情、抜け殻のような感情。本当にすべての仕事を断ち切ってここに戻ってきたため、後半となった今には何もやることは残っていなかった。唯、海の水面を眺める。

「あれあれ、暇そうじゃん」

突然、後ろから声がした。この数日でぐっと聞きなれた、甲高い声。即座に振り向くと、嗤笑するそら君がそこには立っていた。

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