三,四日目
昨日は、あの後もあまり寝付けなかった。
初めて、人だと思っていたものが人ではなかった、そんな経験をしたのだから無理もないのかもしれない。
昨日ほぼ確定事項となった、そら君が人間ではないという事。ものの2秒弱の間にテトラポッドから降り、音もたてずに速足で走り去り闇に紛れるなんてことは、並の人間、ましてや小学生にできるわけがなかった。
じゃあ彼は一体なんだ?自在に変化する、おぞましい怪物?狼男?それとも天使や精霊?思いたくないが、彩の言う通り幻覚?
全くわからない、というよりわかることができない。
当然ながら、”こんな話し方をする人型のナニカは○○です、注意するように”なんてことは私はこれまでの学校教育で教わっていない。よく覚えていることは、昨日と一昨日に彼が渡してくれた、なんてことのない一粒の金平糖の味だけ。その変わらない金平糖の味すら、少し不気味にすら思える。
私はどうしたらいい?きっとそら君は今日も変わらずあの海沿いに座っている。素直に問い詰める?警察に連絡?関係を断つ?はたまた、特に気付いてないふり?あまりにも、結論を判断するには少なすぎる情報に懐疑する。
…しかし、私はもう、不気味と思って避ける心よりも、この出会いを最後まで見届けたい、彼が何なのかをしっかり見届けたい、そう思っていた。
それに、本当に人でなかったとしたら。そのうえ、私に危害を加える存在だとしたら。きっと、私が家にいたところですぐに来ようとすれば来れるのだろう。そんなことになれば、家族にも被害が及んでしまう。それは、あってはいけないことだった。
行こう、今日も、彼のいつも座っているあの場所へ。
日も完全に沈み、初めて彼と会った時の時間。
最悪死に得るな、とかそういったことを思いながら、いつもの道を歩く。きっと、理解しているつもりでも、頭の表面でしか理解できていないのか、変に客観視しているのか。なぜか、不思議と怖さは出てこなかった。
そして、大体普段出会うところの周辺にたどり着く。
…しかし、いつになっても彼の姿は見えない。
前出会った場所を過ぎても。どれだけ彼の姿を探しても。彼の姿はどこにも見つからない。肩透かしを食らったような気分だ。
何かあったのだろうか、もしかすると家で何かあったんじゃないか。人ではないと断定したはずなのに、そんな甘えた同情心が湧き出る。
…次の日になっても、彼はどこにも見当たらなかった。前日来た、痕跡すら残さず。
私は、ついさっきまで怖れていたはずの彼の背中を、いつの間にか探していた。
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