二日目・昼
「おーい!葵、こっちこっちー!」
どこかから私の名前が聞こえる。声の先を探し、駆け寄ると、そこには私の中高の友達、浅野 彩が手を振っていた。
「ごめん彩、見つからなかった」
「あはは、確かに、ここは人もまあまあ多いもんね」
「うん、この町にこれだけの人がいるなんて嘘みたい」
私たちの今いる場所はイオン。全く街の活性化を進めなかったこの村にある唯一の憩いの場。彩から聞いた話だと、毎週土日になると毎回どこから来たのかもわからない村民で賑わうらしい。私たちも、久しぶりに私がこの村に帰ってきた、という事でこの村に残っている彩と二人でここで遊ぼうとしたところだ。
「ねーねー、葵昨日のネットニュース見た?」
「どうせまたいつものどこから出たかわからないゴシップでしょ…見てないよ。というか、新作進んでるの?」
そう、彩の職業は小説家で、ネットの新人賞で大賞を獲得したという化け物なのだが、如何せん職業病なのかネタを探しすぎてゴシップとかそういうグレーラインに手を出すことも多いのだ。
「ひどっ。何、人のことをゴシップ記者かなんかと勘違いしてない?こんなに猫が好きそうな顔してるのに」
「してない」
「即答!?…まあいいや、彗星のニュースだよ、テレビはさすがに見てるでしょ?」
「彗星、そのニュースは知ってるけど、どうかしたの?」
彗星のニュース、きっと私が帰る前日に日本の上空を彗星が通る、そんなニュースだったはず。どうせネットが賑わってる、とかそういう話だろう。
「違うよ!?…違わないけど。昨日突然出た続報、ほんとに凄いんだよ」
「何、勿体ぶらずに教えてよ」
「昨日突然、彗星の進路がこのあたりの真上の空になったんだってさ!こんな辺鄙な場所の真上に決まるなんて、運命だと思わない!?」
「なんのよ…」
「えー、ネタ出しに使え、とか?」
「安い運命ね…」
「うるさいなあ。ほら、どこか行くよ!」
「はいはい…」
「はー、楽しかったね」
「そうね、でも二度と彩とはホラー映画は見ないわ」
映画館にゲームセンター等、イオンにあるものは全て行って、もう疲れた、と適当な喫茶店に入る。
「ごめんって葵、横から驚かしたのは悪いと思ってるから」
「絶対許さない、彩のせいで私だけ2Dの映画が3D超えて4Dになったのよ?」
「えー、面白いじゃん」
「どこがよ…やり返すわよ」
「嫌だけど」
「でしょうね…あ、彩って、この村にいる人詳しい?」
目の前でアイスココアを飲む彩に質問をする。
「ん?ん~、あんまり外でないから少ないほうだけど、一応は。何、昨日か一昨日に何かあったの?」
「いや、昨日海沿いを歩いてたんだけど…」
昨日の男の子との事の顛末を説明する。真夜中だというのに小学生がテトラポッドに座っていたこと、その男の子が不思議だったこと、気が付いたら帰ってしまっていたこと。彩は、最初はどうでもいい、といった様子だったが、徐々に真剣にこちらの話を聞くようになった。
「うーん…」
彩が考え込む。知っている子なのか、そう期待したが、彩から出た言葉は
「葵、幻覚でも見てたんじゃない?」
…なんともおざなりな結論だった。
「なんだそれ、なんて言うか期待してたのに、期待外れだよ」
「いや、この村、もう小学校なんて全部廃校になってもう無いし、小学生も誰も見たことないよ」
「え…?」
なんだこれ、急に怖くなってきた。
「でも、私は昨日あの子に金平糖を貰って…」
「それも葵の幻覚?ま、その子も帰省とか、何かの精霊でしたー、とか?」
私を小馬鹿にするような口ぶりで言う。
「いや、絶対彩が間違ってる。確かに変な子だったけど」
「あはは、それはまあ、続報があったら教えてよ。面白そう」
「嫌、もう帰る」
焦ったように肩掛け鞄を持ち上げ、レジの方へ向かう。彩の奴、さっきも映画の最中に驚かしてきたのに、またなんて、なんて酷いやつ。
「えー、じゃあまあいいか。行こう。
またいつか、帰ってきなよ」
「そうね。彩がこっちに来てもいいんだけど」
「やだよ、上京なんて。一人暮らし面倒くさい…じゃあまたねー」
「またねー」
彩と手を振って別れる。結局、あの子のことは分からないどころか、謎が増したばかりだった。
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