Americano

ピンポーン

送られてきた住所につきインターホンを押す。

すると俺より約10cmほど背が高いだけどどこか俺より弱そうな男が出てきた。

「来たよ。」

「待ってました。どうぞ入ってください。」

そういう彼は高そうなスウェットを身にまとい俺を部屋の中へとつれていった。

案外部屋はきれいできちんと片付けられていた。

「なにか飲みます?」

「あ、じゃあなにかもらおっかな何がある?」

「ココア、紅茶、緑茶、ハーブティーです。」

「じゃあハーブティーで。」

「わかりました。」

そう言って彼はキッチンへといきふたつマグカップを出した。俺はそんな彼を横目に着ているスーツを脱いだ。

「どうぞ。」

彼はテーブルの上にふたつマグカップを置き椅子に座った。

俺も彼と向かい側の椅子に座った。

そして目の前に置かれたハーブティーを口に含んだ。

「うん。おいしい、」

俺はそう呟いた。

「よかった。これ先輩好きそうだなって思って買っといたんです。」

そう目の前の彼は少し悲しそうに笑いながら言った。

「なぁ里中。」

「なんですか?」

そのときの俺たちの間には妙な緊張感があった。とても重い、なんとも言えない緊張感。

「いままでごめん。ほんとうに」

「別にいいですよ。わかっていたことなんで。」

そう彼は切なそうに笑った。

「明日の夜まで。明日の夜までは里中は俺だけのもののだし、俺も里中だけのもの。わかった?」

俺はそう言って里中の手を握った。

「わかりました。」

里中はそう繋いだ手を愛おしそうに見つめて言った。

その日の夜は二人で風呂に入り二人でご飯を食べふたりでベッドに入りふたりで向き合いながら寝た。


次の日朝音色の違うふたつの音楽によって俺達ふたりは目を覚ました。

「ん~おはよ、」

「おはようございます。先輩。」

「ねぇ今日だけお前は俺のだけのものなんだろう?」

「はい。」

「じゃあ敬語やめてよ。というかずっと気になってた。」

「わかりま、じゃなくてわかった。」

そして里中との恋人(仮)の関係の最後の日が始まった。

ふたりで朝食を食べ、ふたりで仕事に向かって、ふたりでいつもの定食屋に行った。


「なんか今日ずっと一緒にいるじゃない。」

「え?」

少し休憩時間が余っていたのもあり自販機に来ていたときのことだった。急に後ろから戸田が現れそう言われた。

「まぁそりゃあ、」

「でもなんか歯切れが悪そうね。」

このとき俺は戸田にはなんだか全て見抜かれているような感じがした。なぜだか隠せない。隠すことに罪悪感を感じる。こんなことならすべて話したい。そう思った。俺は重い空気を漂わせながら

「あいつと別れるんだ。」

と言った。

「え?」そしてすぐに聞こえる戸田の間抜けな声。

「あいつに言われちゃったんだよ。先輩俺のこと好きですか?って。」

「ふーん。」

そう言って戸田は缶コーヒーをひとくちのんだ。

「俺、あいつにうん。そうだよ。好きだよって言えなかった。あいつにも気づかれていたんだよ。あの女のことで頭が一杯だっていうこと。」

「まぁ。要約すればお前は最低だってことか。」

そう冷たく戸田は言った。

「まぁ」

俺はその事に関して反論はできなかった。それ以上ひどいことをしたなんて言えなかった。

「お前のいいとこはそうやって嘘をつかないそして傷つけていることにたいして罪悪感を抱くこと。悪いところは愛に飢えているところ。先に結婚した俺が先輩としてアドバイスしてやるよ。」

そう言って戸田は笑った。

「いらねぇよ。そんなアドバイス」

そう俺も笑った。そして戸田は缶コーヒーを飲み干した。

「じゃあ俺先行くわ。あなたの彼氏さんに妬まれそうだから。」

そう言って戸田は歩いていった。

そしていつも通り仕事をし、ふたりで町役場を出た。

「この後どうします?」

「うーん。里中の家行こっかな。」

「またですか?」

そう彼は笑っていた。

「だって最後の夜だから。」

俺がそういうと里中は少し切なそうな顔をして俺の顔をみた。そのまんま

「そうですね。」と切なそうに言った。

「なぁ里中。」

「なんですか?」

「好きな食べ物なに?」

俺は里中の顔をみて言った。

「えーそうですね。タコライスですかね。」

「へー、じゃあ今日はタコライスとサラダと適当にスープでも作るか。」

「え、先輩って料理できんですか。」

里中はビックリしたような表情を見せた。

「え、できるよ。」

そうかえすと里中は微笑み下を向きながら

「楽しみだな。先輩の手料理。」

そう呟いた。

俺はそんな里中の左手を手に取りぎゅっと包み込んだ。

帰り道にスーパーにより材料を買った。もちろん会計の時以外はずっと里中と俺の手は繋がっていた。

「たーだいま。」

「おじゃましまーす。」

里中が部屋の鍵を開けリズミカルな声の後に続いて俺も挨拶をすると先に入った里中が振り返った。

「先輩!」

「ん?どした?」

「ひとつわがまま言ってもいいですか?」

「うん。いいよ。でも敬語はダメ。」

「あ、またやっちゃった。」

そう里中は照れ隠しのように笑った。

「で、なに?」

「ただいまって言って。」

なんだ。そんなことか。これが俺の一番の感想。俺は少し戸惑いながら少し上目遣いで

「ただいま。」と言ってみた。

「かわいい、」そう里中は呟いた。

「え?」

俺は意味がわからず声をもらすと里中は急に抱きついてきた。

「すきです。すきです、!先輩。」

「ちょ、ちょっと里中!苦しい!」

俺は笑いながらそう言うと里中は「ごめん。」なんていって俺からはなれた。

「ねぇ里中は俺のおかえりにたいしてなんもないの?」

回りくどい言い方だなとは思った。だけどなんか俺だけが言わされているのが嫌だった。

「おかえり!」

そう言って里中はまた微笑んでいた。

「てか、早く作んないと!」

「あ、そうだった!」

俺と里中は急いで靴を脱ぎ、ドタバタと部屋のなかに入り手を洗った。

「里中はゆっくりしてていいよ。」

俺がそう言うと里中は俺の後ろに回り俺のことを包み込んだ。

「やぁだ。俺もお手伝いするの。」

「わかった。じゃあ隣においで、」

そう言うと里中は嬉しそうに隣に来た。ただふたりで玉ねぎまるごとスープと簡単なサラダ、タコライスを作るだけ。それだけなのになぜだか笑いがたえなかった。

その後はふたりで向かい合って笑いながらご飯を食べた。途中でコップが倒れて中の水がなくなったアクシデントすら楽しかった。

そしてお風呂にふたりで入って俺は昨日とは違う里中の服を身にまとい里中がいれてくれたハーブティーをふたりで飲んだ。

時刻は21:00。あと3時間。

「ねぇ、里中。」

「なんですか?」

「今日も一緒に寝よっか。」

「はい。」

そう言って里中は俺の手を握ってきた。

俺達は朝と同じベッドで向き合う形にして入った。そして俺は吸い込まれるように里中の頬に手を添えた。そして。

「っ、はぁ」

俺は、俺は里中の唇に自分の唇を当ていた。

「せんぱ、」

俺は里中がなにかを言うのを遮りまた唇を重ねた。なんでそうしたのかは自分でもわからなかった。どんどん里中とのキスは深く、長くなっていった。そして里中の上に跨ぐような形になった。

「ん、せんぱい、あの、」

「ちょっと黙って、べーして」

そう言うと里中は素直に舌をだした。俺はその舌を吸い込みまた唇を重ねた。

「せんぱい。」

「なぁ、手出していいか?」

「え、」

里中の目はとろけていて俺の言っていることがわからないようだった。俺は里中の右耳に近づいた。

「だから俺とセックスしよ?」

そう言うと里中は静かに頷くだけだった。

俺はそのまんまキスを続けた。そしてだんだんと手を下へと下げていった。

「ねぇ、もうここ勃っているけど?」

そう言うと里中は顔を赤らめた。

そのまんまキスをしながら里中のズボンに手を掛けた。そして彼のものを解放して慰めた。

「せん、っぱい恥ずがっしいです。」

「大丈夫。今日だけだから。あと敬語」

「あ、えっごめ、ん、なさい。」

「だから敬語。」

「ごめん、あ、ちょっと、せんぱいまっで、」

そう言って里中は慰める俺の手をどけようとしてきた。俺は一回慰めるのをやめて彼の手を取り上にあげた。

「そんな力で俺に勝てると思ってるの?」

俺は彼の上から退いた。そして自分のネクタイを持ってきて再び里中の上に跨がり、里中の両手を掴み上にあげた。

「え、先輩?」

俺はその手をネクタイで縛った。

「これでもう抵抗できないね。」

また里中の右耳に近づき俺はそう呟いた。そして再び露になっている里中のものに手を掛けた。

「せん、ばいっ」

「イキそ?」

そう言うとこくこくっと里中は首が取れるのではないかと思うほど頷いた。

俺はまた彼に顔を近づけ、

「いいよ、イケば?」

そう言うと彼は潰れ掛けた声をだし体を弓なりにし震えだした。

「気持ちよかった?」

そう問いかけるとこくこくっと再び首が取れそうなほど頷いた。

「もっと気持ちよくなってみる?」

そう聞くと里中は高い声で「うん」と言った。

俺はその言葉を聞いたと共に彼の手首につけたネクタイをはずし彼をお姫様抱っこして風呂場へと連れていった。

「はい、ばんざいして。」

「えっ、」

彼は戸惑って固まってしまった。

「ヤりたいんでしょ、中洗わないと。」

「あ、」

彼は妙に納得したような素振りを見せて腕を上げた。そして俺は彼の服を脱がした。

「大丈夫。ちょっと苦しいかもしれないけど優しくするから。」

「わかりました。」

「敬語、」

「あ、わかった。」

俺はそこからネットで勉強した知識だけを使い彼の蕾をほぐしていった。

「っん。先輩」

「ごめん。苦しかった?」

「いや、初めてを先輩に奪われているのがなんだか幸せで。」

「そ、それはよかった。」

だけどそんなことを言った彼は時々苦しそうに顔をしかめていた。

「よし、大丈夫かな。出よう。」

「は、い。」

俺たちはそのまんま風呂場から出た。俺はバスタオルをとり彼の体を拭く。

「大丈夫?ここでやめてもいいけど。」

「いやです。まだ、ヤりたい。気持ちよくなってみたい。」

「敬語ぬけねぇな。」

「すみ、じゃなくてごめん。」

「よし、ちょっと待って。」

俺は彼の体を拭き終わると自分の体をササっと拭きまた彼のことを抱き上げた。そのまんまベッドに彼を優しく置きまた唇を重ねた。そして少し見つめあってからさっきと同じように彼のものに手をつけ彼からでた潤滑液を手に取りそこらのSNSですこしばかり勉強したように彼の蕾に指をいれた。

そこからのことは興奮してあまり覚えていない。しかし里中と繋がった時に里中がとても俺のことを煽り、求めてきたこと。

そして里中が涙を流していたことだけはっきりと覚えていた。


23:50

事が終わりふたりしてベッドに向かい合って寝転んだ。

「大丈夫か?」

「はい」

その声はとてもかすれていた。俺は彼の頭を撫でた。あと10分。

「先輩。」

その声はとても甘ったるかった。

「なに?」

「すきです。」

「俺も好きだったよ。」

あと9分。

「先輩日付変わったらどうするんですか?」

「帰るよ。」

「え?」

「約束は守る男だから。」

あと8分。

里中は上向きになった。

「明日からまた戻っちゃうのかAhaha」

そんな彼の独特な笑い声が部屋中に響いた。俺はなにも言えなかった。

あと7分。

「先輩は俺のこと好きでしたか?」

「好きじゃなきゃこんなことしないよ。」

俺は仰向けになってそう言った。

あと6分

「先輩、」

「ん?」

「バグしてください。」

「いいよ」

お互い裸のままくっついた。

あと5分

「先輩って案外あたたかいですよね。」

「なんだよ、それ。」

「体温が高いですね。って意味です。」

「なるほどね。」

あと4分

お互い、なにも言わずに抱き合っていた。

あと3分

「先輩はあの女の人が好きですか?」

「うん。好きだね。」

「先輩は浮気性ですか?」

「違うね。たぶん。」

あと2分

「俺、先輩と死にたかったです。」

「俺はあいつと死ぬ。」

そう言って笑いあった。

あと1分

「先輩。。好きでした。」

「うん。」

0:00

「あ、せんぱ「よし、これでおしまい。」

俺はベッドから起き上がり脱いだ服を着た。里中はまだ呆然としていた。

「じゃあ、もう行くわ。」

そう俺がリビングから自分の鞄を取り声をかけると里中は

「最後。玄関まで行きます。」

そう言ってベッドから起き上がった。

「いった。」

里中は腰に手を当て顔をしかめた。

「あんま無理すんなよ。寝てていいよ。」

「やだです。てかこのまんま寝れませんよ。後処理してない。」

なんだかんだ言って玄関までふたりでいった。

「先輩。少しの間でしたけど幸せでした。」

「うん。そっか。」

俺はそう言って里中の部屋をでた。

その帰りに見た月は雲が被っていた。

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