第2話 月へと落ちる

ドンドンと扉を叩く音がする、俺は重たくて軽い身体を持ち上げて歩いて進む。


「碧海大丈夫か?大学でやることが多くて遅れてな、急いで来たが」

こう...」


扉を開けて親友の新木 あらき こうを出迎える、不安に押し潰されそうだが俺は口を開いた。


「本当何だ!オレが新木 碧海なんだ!」

「小さくなったな」

「お前今言うことそれかよ」

「それはそうだ俺より元から低かったとはいえ大して変わらず、170cmはあっただろ?それが今じゃ俺が見ろしているんだからな」


いつもの狂ったようなテンションで言われてほっとしてた、とりあえず家へ入っていいぞと言って中へ入れた。


「何で女になったんだろうな」

「それも気になるが目の下が真っ赤な点だ、寂しくて泣いてたのか?」


笑いながらそういうコウは俺を小馬鹿にしてるようでムカついた、上から目線で余計にイラッとした。


「会社も病院も信じてくれなくて全部失うかもしれないんだから泣いてたに決まってんだろ!」

「身分証は使えないか、会社もそれじゃ無理だろうな」

「どうするんだよじゃあ...」

「実家のコネで俺が何とかしてやろう」


そういえばこいつの実家太いんだったな...チートか?顔もいいし性格までいいとか何なんだ!?昔からモテてたしな。

それは置いといて何とかなるかもしれないが何かムカつく仲がいいとはいえど上から目線な感じが特に、俺が小さくなるだけだが。


「表情がコロコロ変わってだいぶ変わったな、お前はあまり表情が変わらなかったんだがなぁ」

「今そこ考えるのか...」


高校生時代も周りとはかなり目線が違う奴だったがここまでとは...女になった事をほとんど気にしないのは何なんだ?。


「それより女になっちゃったんだが」

「ああ、そうだな」

「何かこう無いのか?」

「碧海は碧海だろ?」


俺はいつも通りの会話に落ち着きを取り戻した、落ち着いたらまたトイレに行きたくなったので俺はコウに声をかけてトイレへ向かった。


「さっきは冷静じゃ無かったからあれだったが、座ってすればいいんだな」


ズボンとパンツを下ろして座る、だがさっきと違い冷静になってちょっと恥ずかしいというかなんというか下は見ない方がいいな。

何か濡れて嫌なので適当にトイレットペーパーで拭いた、変にデリケートなのでたたんでポンポンする様にするしかない。


「碧海とりあえず親には連絡したのか?」

「いーやまだだ」


一人暮らしの孤独な男だ、家が嫌で早めに出て行った手前連絡をとっていない、久しぶりに連絡してみるか?。


「電話してみるよ」

「一応しといた方がいいだろう」


プルルルルと電話をかける音を鳴らす。


「碧海?何だ?」

「オレだよ、分かるか?」

「はぁ?詐欺師か?最近のは息子のフリして電話して来るって言うが随分と女声で適当だな」

「いやオレ」

「あーもういい二度と連絡してくるな!お前見たいに暇じゃないんだよ!」


ブチッと切られてしまった...また泣きたくなってきた、分かっていたが心が追い付かない。


「うぅぅぅ」

「俺が余計なこと言ったのが悪かった、ごめんな」

「馬鹿!泣いてない!オレは男だ!」


この身体になってからというもの感情の制御がしずらい、俺は一体どうなっちまったんだ...。

悲しみと不安が入り交じり頭がごちゃごちゃで男の頃には明らかに無かった不安定さに対応出来ない。


「とりあえず俺の姉でも呼ぶか、何か分かるかもしれん」

「え?お前姉ちゃん居たのかよ...」

「ああ、言って無かったか?」


そこそこの付き合いなのに知らなかったぞ?大事な事は言わないんだよな〜こいつ。


「あ〜姉か?明日〇〇に来れるか?あ〜分かった」

「とりあえずご飯でも食べるか〜」

「何かあるのか?」

「お前も食べるのかよ!」


何だかんだいつも通り扱ってくれるのは感謝しかないな。


「パスタ茹でるか、ソースも一緒に茹でよ」

「碧海そんなの食べてるのか」

「庶民はそんなもんなんだよ!」


雑だが早く食べたいのでソースも一緒に茹でてしまえ。


「ほらよ」

「おお」


かなり茹でたのでこれでたりるだろう、ズルズルと啜るとトマトの酸っぱさと旨みで美味い。

半分くらい食べた所でお腹がいっぱいになってしまった...こんなに食えなかったか?俺。


「食べきれないから明日に回すか」

「碧海大丈夫か?そんなに食わなくて」

「ああ、お腹いっぱい何だ」


しばらくコウと話していたら眠くなってきた。


「ふわぁ」

「お、眠いのかじゃあ俺帰るは明日も忙しいな」

「ああ...またな」


この身体になってからやたら眠いような...とりあえず歯磨きして寝るか。

歯磨きをして布団へ潜り込むとそのまま直ぐに視界は暗転したのだった。

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