全てが終わって全てが始まる〜終わりから始まる女の子生活

幸せとは何か

第1話 朝起きたら全てが無くなっていた

俺、坂井 碧海さかい あおうみは高校を卒業して適当に就職した結果ブラック企業に入ってしまった孤独な成人男性だ、恋愛経験は無しで中学生の頃に好きだった女の子に告白した所を見られ断られ拡散されてネタにされて以来トラウマになりそれ以降彼女にしたいと気になるもののそれまでで1歩引いた場所から見て居るだけの傍観者となったのだ。


「は〜使えねぇ奴だな」

「...」

「黙って無いでこの分もやっておけ!!」


ブラック企業で働き無能な上司は仕事をせずにWebサイトを開いて何処かの掲示板でネットサーフィン、俺は上司に目を付けられて上司のサボった分仕事を押し付けられていて、他の目を付けられて居た奴は当然の様に深夜に帰れないかもしれないと嘆く日々、ただ毎日働く孤独な日常をおくっていた。

地獄のような労働が20連勤続いた時たまたまだが夜中の1時に帰る事が出来たのだ、久しぶりに睡眠時間が確保出来る、臭いか分からないがご飯も食べずにそのまま散らかった部屋の布団へダイブして寝てしまったのだった。


「ん〜?」


妙な違和感と共に目が覚めた、会社からの電話?時間を見ると8時だった、身体から血の気が引いていく今日は朝早くから出勤せねばならなくて6時には会社に着かなければならなかったのだが完全に寝坊をしてしまったのだ。

慌てて携帯を手に取ろうとするが届かない、どういう事だ!?と思い手と腕を見ると細くしなやかな腕に真っ白な小さい手が見える。


「は?」


訳が分からないが寝ぼけていた頭が冴えると俺の胸が妙に重い事に気が付いた、何故かぶかぶかなスーツを掴み胸見てみると胸が膨らんでいた。


「オレは夢でも見ているのか?え?」


声まで高くなっている!?まさかこの違和感はと思いズボンとボクサーパンツを上へ引っ張り下を見ると。


「何も無い」


朝の8時鳴り響く携帯の着信音を部屋に響かせながら俺は女の子になってしまったのだった。


◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎


15分程考えて冷静になりとりあえず鬼電が途切れてしまったのでこちらからかけ直す事にした、上司のあの無能はきっとバズーカの如く怒りの咆哮を放って来るが仕方が無い。


「もしもし」

「坂田ぁぁ!!」

「はい」

「?誰だお前は!だが坂田の番号からだ!お前寝坊したからってボイスチェンジャー?とやらでからかっているのかぁぁぁぁ!!」

「違います!聞いて」


ツーツーツーと電話を切られた音がした、俺どうしたらいいんだ?と涙が止まらなくなった、こんなに涙脆く無かったのにどうしたらいいのか分からず子供のように泣き悲しさに頭が支配された。

しばらくして落ち着いたらトイレに行きたくなったのでトイレへダボダボの服を引きずりながらトイレへ向かう。


「ふ〜」


そのままいつも通り立ってするが、ん?何かおかしい下を見ると下げたパンツとズボンがびしょびしょになっていたのだった。


◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎


気分は最悪だ...とりあえずこの状況を打開する為にも会社へ電話してもこの声じゃ信じて貰えないだろう、だからとりあえず証明して貰うべく病院へ行くしかない、親友の新木へも連絡しておくか...。

ぶかぶかだがズボンにTシャツ、上着を羽織り財布と携帯を持って病院へと向かった。


「すみません~」

「はい、診察ですか?初診ならあそこの場所の機械で紙をとって受け付けに呼ばれるまで待っていてくださいね」


あまり病院へ行く事が無くて病院のカードを持って居なかったので作らなくてはならないし時間もかかりそうだが待つしかない。

待っていると紙に書いてある番号が呼び出されたのでカウンターに呼ばれる。


「では保険証を出してください」

「ああ」

「ふむふむ...ん?男と書いてありますけど...ダメですよお兄ちゃんの保険証使っちゃ」

「え?俺のですよ」

「おふざけじゃないなら身分証はありますか?」

「...」


俺には身分を証明する物が一切無かったのだ、社員証は顔写真なので髪の毛も長くなってしまったので使えない...顔も鏡を見たら完全に女の子だった。

俺はそのまま帰るしか無かった、どうしたらいいのか全く分からずとりあえず家で親友を待つ事にした。


「...既読がつかない」


昼間になっても既読が付かずに段々不安になり始めた、何故なら嘘だと、ドッキリだと思われる可能性があるからだ。

菓子パンを5つ買ってきたが食べ切れず2つ食べてお腹いっぱいになってしまった、そして布団の上で寝そべって居たら眠気と共に寝てしまった。


◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎


起きて外を見ると夕方になっていた、既読も未だに付かない不安で泣きたくて、布団の中で小さくなって、夜になると既読は付いたが返信は来なかった。


「ああ...」


俺は全て失ったのだと泣きながらこの時自覚したのだった。

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