#11「気まずい朝(中編)」
「――
リビングの戸口から顔を覗かせたのは
先輩は俺と目が合うと、ぴたと動きを止める。
「な、凪紗先輩……おはようございます……」
「お、おはようございます……」
なんだか凪紗先輩の顔を見ると、昨夜の出来事を思い出して気まずかった。
それは向こうも同じなのか、凪紗先輩は視線を下げながらどこか落ち着かない様子。
互いに目を合わせず、不自然な沈黙に包まれる。
そんな居心地の悪い雰囲気を嫌って、俺は口を開いた。
「そ、そういえば
「は、花火なら部屋で着替えているところです」
「そ、そうですか」
「はい……」
ダメだ、会話が下手過ぎる……!
もっと自然に会話が繋がるような話題を振れれば良かったのだが、どうやら俺にそんな高度なコミュニケーション能力はなかったようだ。知ってたけど……。
俺と凪紗先輩の間に再び重い沈黙が降りかけたとき。
俺たちの様子を怪訝そうに窺っていた樹里先輩がまじまじと凪紗先輩の顔を覗き込んだ。
「あれ凪紗、目の下にクマができてるぞ?」
「えっ、嘘……」
「昨日、遅くまで起きてたのか?」
「べ、別に樹里には関係ありません……!」
「なんだよ、また隠し事かぁ?」
「隠してません……! そ、そんなことより早く出かける準備をしてください」
「ちぃー、分かったよ凪紗お母さん」
「誰が、お母さんですか……」
樹里先輩は不貞腐れたように残ったトーストを口に放り込むと、テーブルの上を片付けてリビングを出て行った。
リビングには俺と凪紗先輩の二人きり。
変に意識してしまい、居心地の悪さを感じながら突っ立ていると、不意に凪紗先輩が躊躇いがちにこちらに視線を向けてきた。
「あ、あの……旭さん……」
「は、はい」
それから胸に手を当て、しばし押し黙る凪紗先輩。
しばらくすると意を決したように顔を上げた。
「その、昨日のことは……二人だけの秘密、ですよ」
目をうるうるとさせた凪紗先輩は頬を朱に染め、唇に人差し指を当てながらそう言った。
その仕草になんとも言えないいじらしさを感じて、先輩の顔を直視することがままならない。
顔に熱を帯びた俺は凪紗先輩に顔を見られるのが気恥ずかしくて、視線を逸らしながら手で口許を覆った。
「わ、分かりました……」
こっちの緊張感が向こうにも伝わってしまったのか、凪紗先輩も顔を逸らし、口を閉ざしてしまう。そのまましばらく沈黙した後、凪紗先輩が口早に言った。
「で、では、少しメイクを直したいので失礼します……」
「あ、はい」
そう言って、凪紗先輩はそそくさとリビングを出て二階に上がった。
リビングは俺一人になる。
その途端、肩の荷が一気に下りたような気分になって大きく息を吐き出した。
なんか昨日いろいろありすぎたせいで、樹里先輩とも凪紗先輩とも気まずい……。
なにより、もっと気まずくなりそうな人がひとりいた。
俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、コンフレークを用意してダイニングテーブルに座る。
どうやらこの後、花火たちがどこかに出かけるみたいだし、朝ご飯を食べたらそれまで部屋にこもってやり過ごそう。今あの人に会ったらまともに顔も見れそうもないし……。
俺は朝食のコンフレークを口にかき込んだ後、洗顔と歯磨きをしようと、リビングを出て脱衣所兼洗面所へ向かう。
洗面所の扉に手をかけ、中に入ろうとしたときだった。
「――えっ……」
おっぱい。
おっぱいがあった。
綺麗な刺繍の入ったワインレッドのブラに覆われた豊満な乳房。
洗面所の扉を開くと、ブラウスを着るために腕を上げ、無防備に上半身を晒した……着替え中の
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