10年前に魔王を討伐した報酬でFIREしました~異世界で早期引退した俺が未だに最強らしいけど、そんなことは心底どうでもいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!~
第4話 子供の成長に焦るるるるるるるるるrrrrr!!
第4話 子供の成長に焦るるるるるるるるるrrrrr!!
「ジョセフ・エグレって、あのジョセフ・エグレか?」
俺は目を丸くしていた。ジョセフ・エグレの名前には一人だけ心当たりがある。最初に出会ったのは何年も前の事だ。そして、最後に会ったのも何年もの前の事であり、随分と埃の被った古い記憶から引っ張り出さないと覚えだせない。
エグレは最初に出会った時の印象は幼気な少女だというものであり、その印象は未だに不変であった。だが、ジョセフ・エグレを名乗る目の前の女性はどうだろうか? あどけなさはとっくに抜け落ち、成人している様な大人びた風貌に、淑女としての品格も備わっている様に感じる。とても、同一人物には思えなかった。だが、その顔には確かに俺の知っているジョセフ・エグレの面影は残っている。
「ええ、多分あなたが思っているジョセフ・エグレよ」
「だって、もう、大人じゃないか!!」
「十年以上の時間が経ったのよ。成長しているに決まっているじゃない」
――本当に子供の成長とは早いものだ。
そして、時の流れを如実に表しており、時に自身の加齢や成長していないことを痛感させられる。
例えば、姪っ子なんかがそうだろう。年に一、二回の頻度で遊びに来て、その度に身長が伸びて成長した姿に「大きくなったなー」と微笑ましく思うと共に、生まれた時はあんなに小さかったのにと寂しくも感じる。そして、この子は年々成長しているというのに自分はいつまで経っても現状維持、いや緩やかに衰退している……と自身の不甲斐なさをしみじみと痛感させられる。だから、来ないで欲しい。立派にならないで欲しい。そう思う叔父さんは、未だに子どもなのだろう。
今の気持ちはそんな感じだ。
さて、おじさんの酷く歪んだ価値観の話などどうでもいいだろう。そろそろ、ジョセフ・エグレの話をしよう。
十年前の魔王討伐にあたり、俺には共に旅をする七人の仲間がおり、そのひとりに
彼女が暮らしていたエルフの集落は、王国の北側にあるクリスマスツリーの森に住んでいたが、魔族と人間の対立が激化する中で、魔族はエルフに同盟を持ち込んだ。しかし、交渉は拒絶され、それに憤慨した魔王から敵対者として排除の対象として認識され、彼女の集落は魔王の使者である〈
だが、エルフの悲劇はこれでは終わらない。彼女たちは人間に救いを求めて王国を
一部のエルフの子どもたちは奴隷として捕獲され、売り飛ばされた。一部のエルフの子どもたちはモンスターに捕食された。一部のエルフの子どもたちは飢え死んだ。
そして、とうとう彼女はひとりになってしまった。
そのまま隠れるように雨風を欄干で凌ぎ、ごみや自生している植物を漁り飢えを満たしながら、なんとか命をつないでいた。俺たちが出会ったのはそんなタイミングであった。
俺もいきなり異世界に飛ばされて、窮地に陥っていた時に助けられた身であった。だからこそ、そんな彼女に救いの手を伸ばさずにはいられなかったのだろう。そして、なんやかんやがあって彼女は俺の三番目の仲間となったのだが、涙なしでは語れないその話は、本書の趣旨から逸脱するため割愛させて頂きたい。
さて、話は変わるが、エルフは長寿で有名であり、人間の二倍の時間を生きるらしい。その分、成長のスピードも人間の二倍の時間が掛かるらしい。
確か、出会ったあの頃は二十歳と言っていた気がする。それから十年の月日が経ったのだから今は三十歳だろう。人間の歳で言うと……十五歳? 思春期の真っ只中の女の子だ。え? あれ? ちょっと待って、十五歳でここまで大人びた体形になるのか? 随分と恵体に育ったな……いや、いろいろと育ち過ぎじゃないか? それに、十五歳の少女に口利きしてもらって遊郭に行くの?
エルフの性に対する価値観も、何歳で成人と扱われるのかも分からないけど、仮に人間と同様に未成年扱いであったら、いろいろと不味いんじゃないだろうか?
いや、まあ、エルフの遊郭には約束だから行くけどさ! 本当は嫌だけど行くけどさ!
俺は心の中で深いため息を漏らす。
(…………こんな大人にはなりたくなかった)
◆◆
防衛省・東部参謀指揮官である、ジャック・ダウンは
今から十三日前に報告されたBクラスモンスターである、
ほとんどの
だが、住み着いて獣害が出ている以上は対処する必要がある。選択肢は四つだ。駆除か、保護か、静観か、平野から追い出すか――
静観は論外だ。ただでさえ、甚大に被害が出ているのに、ただ指をしゃぶって見ているなんて、防衛省の存在価値がなくなるだろう。では、追い出すのはどうだろうか。一度住み着いた
だからこそ、最も迅速かつ確実な対応方法は駆除だろう。そのため、参謀指揮官として、駆除する様に指示を出した。合理的な判断だと思いたい。
だが、事態は一向に好転しない。全くもって駆除できる見通しも立っていない。幾人もの冒険者パーティーに依頼したが、ことごとく失敗に終わった。
そもそもの話、本件は防衛省の業務外である。冒険者組合に投げ出されたというか、押し付けられたというか。仕方がないことではあるが、それでも、すべてを放り出しといて非協力的な姿勢には感心しない。
冒険者組合と防衛省は住み分けができていた。俺たちは国によって設置されており、国務に従事する公務員である。そして、仕事は国家間の防衛と民間人の保護である。つまりは、対人戦闘が主な仕事である。
一方の冒険者組合は、都合のいいことを言い体裁を保ってはいるが、個人事業主を搔き集めたような張りぼてな組織である。仕事も個人や組織から依頼されたモンスターの討伐や護衛、保護など多岐にわたる一方で、国防の様な有事の際は知らん顔をする。そして、自分たちの手に負えないと思うとすぐに防衛省に泣きつき、押し付けて来る。
要するに我ら防衛省の手の届かないような仕事の受け皿であり、防衛省のおこぼれで成り立っている仕事と言える。
だが、国益どころか、国家間の関係にまで影響が及ぶ可能性が出てきた事から、防衛省・冒険者組合共同協定が法政省と経済省、財務省から進言された結果、国務長官より防衛省の協力が強制的に決定された。
今回の件は防衛省の本意ではない。
そして、防衛省が協力すると決まったら、やはりと言うか、当然と言うべきか、すべてを放り出す様に冒険者組合は本件を丸投げしたのだ。
そもそも、王国はモンスターの出現や被害が他国と比較しても多い。特に南側にある連峰や北側にある大森林には多くのモンスターが生息しており、討伐の依頼が殺到している。西側の連邦国とも小競り合いが続いており、いつ開戦してもおかしくない緊迫した状況が続いている。唯一の安息の地が東側の国境付近であったはずなのに。
本件の東側に広がるカントン平野は低レベルのモンスターしか生息していないうえに、帝国との関係が良好なため軍備を回していない。そのため、対モンスターへも対人でも防衛が手薄になっていた。
経済的にも、物流的にも王国にとっては基盤となっているパイプラインである。だが、そこを防衛できるほどの人員も物資も金策もない。
今まで軽視して後回しにしていた付けを払わされているのだろう。
しかも、極めて重要な帝国との物流経路であり、今のまま
そして、食料の補給経路でもある。海のないこの国では一部の食料を他国に依存している。特に塩だ。
既に、輸出量、輸入量共に平時の三分の一まで減少していると報告を受けている。
このまま、手を拱いていたら王国に飢饉が訪れる。
そして、時期に訪れる秋季は産卵の時期だと生物学者が言っていた。つまり、より
そうなったら減給か、降級か、最悪の場合はクビだ。間違いなく。
ジャック・ダウンは天井を見上げて嘆く。
「ああ、こんな時に英雄様がいれば……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます