第11話 お仕事してます!
「それじゃあ、ローズ。行ってくるよ」
「ええ、ドルン様。行ってらっしゃい」
朝、仕事に出かけていくドルン様を見送る。
さて、私もお仕事に行かないとね。
私とドルン様が自由都市に着いて2月が経っていた。
自由都市についた私たちは一軒の家を借りてそこで生活をしていた。
ドルン様はいつの間にか冒険者の資格を取得して今は冒険者として活動している。あれだけ強い方なので、冒険者ギルドでも重宝されていると人伝いに聞いた。
私はというと、当初は追手が来ないか毎日びくびくと過ごしていたんだけど、次第に落ち着いてきて買い物で外出するこことも増え、今は普通に外出している。
さらに今は仕事もしている。というのも。
「あら?ローズちゃん。今日も子どもたちのお世話お願いね」
「はい。任せてください」
孤児院の院長のおばあさんからお願いされた。そう、私のお仕事は孤児院で子供のお世話をすることだ。
ある日街で買い物をしている時に、とても重そうな荷物を持っているおばあさんに出会ったのだ。
流石に無視するのもわけにもいかず手伝いをしたところ、行き着いた先がこの孤児院だった。
「あー、ローズ先生だ!」
「いっしょに遊ぼう!」
おばあさんはかなりのお歳なので、子どもたちと一緒に遊ぶわけには身体が厳しく、そこに現れた私が子どもたちの遊び相手として選ばれたわけだ。
当初は子供の面倒など見たことがなかったから戸惑ってばっかりだったけど、今では一緒に遊ぶことも楽しくなってきた。
「おかえり。ローズ」
「ドルン様、ただいま戻りました」
孤児院から家に帰ると、ドルン様は先に帰っていた。
私が孤児院に通いだしてから、いや、それ以前もドルン様はお仕事を早く切り上げて帰ってきてくれている。それで冒険者の仕事は大丈夫かと心配したこともあったけど、それを話すと。
「僕からするとローズの方が心配だよ」
と笑われてしまった。
ちなみに、私が働くことに関しては大分心配をされてしまったけど一緒に孤児院に出かけたことでOKが出た。どうやら、孤児院についても調べたらしい。
「今日の夕食はシチューだよ」
「わぁ、ありがとうございます。今日も美味しそうです」
夕食はいつもドルン様が作ってくれている。
申し訳ないという気持ちはあるんだけど、私が料理したことがなかったのと、王子の作る料理がとても美味しかったことでズルズルとお世話になってしまっている。
ドルン様がおやすみの日は料理も教わっているからいつかちゃんと作れるようになると思いたい。
「それじゃあ、おやすみ」
「はい、ドルン様。おやすみなさい」
そうして私の一日は終わる。
ちなみに、寝る部屋は別々だ。
だって、私たちは別に夫婦の契りを交わしたわけではないんだもの。ただの協力関係だ。
今のところ私が一方的にドルン様に依存しているような気がするけど。いつかきっと……
あと、語るべきところは元の国に関してとか?
しかし、私は全然状況がわかっていない。
なにやらドルン様の方で情報収集をしているみたいなんだけど、「心配しなくて大丈夫」といつも言われてしまう。
私自身としては気になるんだけど、ドルン様がそう言うのであれば仕方がない。
いつか聞かせてくれることを祈るけど、それはつまり大変なことが起こった時ということで、この生活の終わりになるので悩ましいところではある。
2月の間に起こったことはこのくらいかな?
とても充実した日々を過ごしていることは間違いない。これまで生きてきた中で一番といっていいくらいだ。
しかし、幸せな日々はいつまでも続かない事を私はわかっていなかったのだ。
その始まりはある日、仕事に行って院長さんに言われた言葉から始まった。
「どうやら子供が急にいなくなることがあるらしいの」
「子供がですか?」
「ええ、目を離したら急にいなくなるらしいの」
「それは……、誘拐とかですか?」
「そうかもしれないわ。でも、貴族の子供狙いとかじゃなくて、一般人の子供が狙われているらしいのね」
「お金目的じゃないってことですか?」
「多分?私自身も衛兵さんに聞いただけだから、詳しいことはわからないのだけど。一応気をつけておいてちょうだいね」
「はい。わかりました」
子供が攫われているかもしれない。ここは孤児院だ、当然子供だって沢山いるから他人事じゃない。
もしかしたら冒険者ギルドでもなにか調査とかしているかもしれないし、家に帰ったらドルン様に詳しいことを聞いてみよう。
「ああ、誘拐の話し?うん、一応聞いて調査はしているよ」
ドルン様に話を聞いてみると、当然王子はその話をしっていた。どころか、どうやら調査の手伝いをしているらしい。
「ローズの職場が孤児院だから、万が一があったら困るからね」
「私のため……ですか?」
「子供が心配だからっていうのもあるけどね」
ドルン様は否定しなかった。
「まぁ、一応冒険者で交代交代で街の見回りをしているけど、一応ローズの方も気をつけておいてね」
「はい」
気をつけよう。これ以上、王子を心配させるわけにはいかないし。
しかしその話を聞いて数日後。私はその当事者になることになるのだった。
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