第2話 王子との初対面は
早速この部屋からの脱出方法を考えなくては。
まずは、正面からということで、ドアから。
ガチャ
はい、閉まってます。知ってました。
閉じ込められているのですものね。
そんな簡単にうまくいくはずがない。
じゃあ、作戦その2。
お手洗いのときとかに来てくれるメイドを呼んで部屋から出て、そこから隙をついて逃げる。
一見、どうにかなりそうな気がするけれど、多分、ダメそうかなぁ。
私がお手洗いに入っている間に、侍女はその前で待っているし、お手洗いからは逃げ出せないと思う。
今まで逃げるという考えがなかったからお手洗いもよく観察とかはしていなかった。とりあえず、試しにお手洗いをチェックしてみましょう。
侍女を呼んでお手洗いに行ってみることにする。
帰ってきた。
侍女が去っていく足音を聞きながら私はため息をついた。
お手洗いはこの部屋と同じ階、つまり3階にある。
窓はあったけど、そこから飛び降りるのは無理だ。
つまり脱出口はなかった。
というわけで、作戦その3。
別の出口を探す。
部屋を見回してみる。
この部屋から外につながっている場所はドアと、それと窓。
そっと窓に近寄り、外を見てみる。
窓からなら逃げられそう……ここが1階だったらだけど。
ここは3階なのだ。
とてもじゃないけど、飛び降りて無事にいられるとは思えない。
どうにか降りれる道はないかな?
窓の外に足をかけられそうな場所を探してみるけど、やっぱり見当たらない。
これは無理そう……
作戦その4。
……そんなに作戦はないよ。
ということで手詰まり?
私はそのまま暗殺されます?
そんなのはゴメンだ。
だから考える。なんとか窓から降りる方法を……
なにか紐みたいなものでもないかな?それを窓から垂らすとか。
そんなものはピンポイントにはなかった。
そもそもこの部屋は極端にものが少ないのだ。
あるのは、ちょっとしたタンスとその中の洋服。そしてベッドだけだ。
紐……、この服とかベッドのシーツとかを結べば結構な長さになるかしら?
ひょっとしたら3階だけど下まで届くくらいに……
ギリギリ足りない?……いやいける!
急いでベッドのシーツとか洋服とかを全て結んで窓から投げてみる。
地面にはちょっと届いていないけど、十分そう。
「よしっ!」
気合を入れて窓から身を乗り出す。
紐をつかんで、足を壁につけてちょっとずつ降りていく。
絶対に下は見ない。うぅ、紐ちぎれたりしなよね。
不安になりながらも半分くらい降りたところで、
「あっ!」
手が滑った。そして、同時に聞こえるブチッという音。
身体が宙に浮く感覚。
時間の流れが急にゆっくりになった。
ああ、私結局このまま死んじゃうんだ。
そうして、私は目を閉じた。
着地の衝撃は思っていたよりも柔らかかった。
あれ?まだ結構な高さあると思ったのに、あんまり痛くないな。
不思議に思って目を開けると。
「……ふぅ、間に合って良かった」
そこには見たことのないくらい顔立ちの整った男性の顔があった。
近い!とっても近いよ!
ひょっとして私死んでない?いや、こんなかっこいい人地上にいるはずないし、やっぱり天国かな?
こんなかっこいい人に抱きとめられるなんてさすが天国。
「怪我はない?」
そんな私を抱きとめたまま男の人は私に問いかけてくる。
「あっ……あっ?」
声をかけられたことで一気に頭が現実に戻ってきた。
「あれ?ひょっとして私死んでない?」
「うん。ギリギリ間に合ったから」
死んでない!じゃあ、このかっこいい人は現実の人!?
「いやぁ、びっくりしたよ。まさか窓の外を見たら壁を伝って降りようとしてる人がいるんだから」
男の人は笑う。
そして分かった、紐が切れて落ちた私をこの人が受け止めてくれたのだ。
そう思ったら、急に恥ずかしくなってきた。
「ほら、あそこから見てたんだよ」
男の人が指をさす、思わずそちらに目を向けると、そこは私が軟禁されていた場所のちょうど対面だった。
いや、そんなことよりもだ。
「あ、あの。もう大丈夫ですので!」
抱えられたままなのが非常に恥ずかしい。
顔が真っ赤になっている自覚がある。
「あ、そう?もうちょっと抱えてたかったんだけどな」
そう言いながら、男の人は私を降ろしてくれた。
明日地面に着くと一瞬よろめいてしまった。
「おっと、大丈夫かい?」
すぐに男の人が支えてくれた。
「ありがとうございます」
しばらく支えてくれたけど、ようやく足が落ち着いた。
「ふぅ……」
息を吐いてようやく気持ちも落ち着いてきた。
「さて、それじゃあ、聞かせてくれるかな?」
「はい?」
「どうして、キミはあんなことをしてたんだい?」
「あっ……」
助けられて思わず、忘れちゃってたけど、私逃げている途中だったんだ。
男の人の顔をよく見る。
かっこいい、同時に優しそうだ。
でも、ひょっとしたらこのまま私のこと捕まえるかもしれない。
「ほら、何か力になれるかもしれないし、なんせ、僕ここの第一王子だしね」
「……えっ!?」
第一王子!?ということはこの男の人が私の婚約者!?
あまりの衝撃に言葉が出てこない。
「そうだね、自己紹介しようか。僕はドルン。この国の第一王子だ。それで、キミのお名前を聞かせてくれるかな?」
「私の名前は……」
ああ、もう逃げられない。
「ローズです……隣の国からやってきました」
話してしまった。
私の言葉に、王子はひどく驚いた顔をする。
「キミがっ!……ああ、なるほど。そういうことか」
王子は驚いたあと、なにやら納得をしているみたいだけど、私はそれどころではない。
「ドルン王子!後生ですから私のことは見なかったことにしてくださいませ!」
もうお願いするしかない。
しかし、王子はにこやかに微笑んだ。
「大丈夫、何も問題ないよ。ほらっ、行こうか」
「行く……や、やっぱり私のこと……」
捕まえられちゃった……
そう思ったんだけど、王子はとんでもないことを言い出した。
「逃げるんだろ?僕も行くからついておいで」
私の時が止まったような気がした。
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