妹VSお兄ちゃんs'①
「もーーーーっ! いったい、どういうことっ!? 私、何も聞いてないんだけど!?」
入学式のお祝いということもあって、今日の夕食は高級ホテルの個室を貸し切り、兄妹でディナータイムを楽しむはずだった。
しかし、本日の主役であろう私は、これからの学校生活が気ぜわしくなることに大いに頭を悩ませ、そしてこの状況を作った兄たちに憤慨しているのだった。
何せ、今日の職員発表。あろうことか、妹の学校に兄が教員としてやってくるなんて。しかも、入学式後の学級活動で時間割と教科担任が書かれたプリントを見た時は、さらに驚愕した。
〈一年三組 教科担任一覧〉
国語 王番地
数学 王番地
英語 王番地
理科 王番地
社会 王番地
体育 王番地
音楽 王番地
美術 王番地
技術 王番地
*なお、技術と家庭科は隔週で交互に行うこととする。
教科担任名は、『王番地』だらけ。もちろん、クラス中、仰天驚愕。唯一、家庭科のみ『小林』という名前で、学級担任の先生だった。私のクラスを受け持ってくれる、唯一の身内以外の人。……それ以外は全員身内。あり得ない。
「ほんっと、信じられないっ! どうりで、いつもだったら誰が出席するかで揉める学校行事、それも入学式なのに出席の話をまったくしないと思った!おかしいと思ったもん! しかも、何で私のクラスに先生としてお兄ちゃんたちが担当できるわけ!? 普通は外れるでしょ! というか、同じ学校に来ないでしょ! そもそも、お兄ちゃんたち教員じゃ無いじゃんっ!」
興奮状態の中、私は非常識なお兄ちゃんs'に対してワンブレスもつかずに捲し立てる。しかし、当の本人たちは何処吹く風。
「せっかくの食事が冷めるぞ。ほら、座りなさい」
「怒ってる顔もかわい~ね、光ちゃん♡」
「薫、式での写真は取れましたか?せっかくの晴れ舞台ですから、記録はたくさん残して置かないと」
「バッチリ、オッケー!光ちゃんの制服姿は、永久保存版だもんねっ!」
「今日は最高にキュートな姿だったなぁ。あっ、『今日も』か」
「明日から毎日毎時間、光の生の制服姿を見て過ごせるなんて、最高だな」
「……気持ちはわかりますが、言い方はアレですよ。怜」
「これ、美味しいよ?光りんに食べさせてあげるね、ア~ン」
「あっ、ずるいぞ!オレのもやるよっ!」
「〜〜もーーーーッ!
「「「溺愛している妹」」」
…………。今日も、お兄ちゃんs'には勝てません。
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