第4話

ログアウトして部屋から出ようとした時、ドアがノックされて母親が入ってくる。

「遼太郎、どうだった?」

「母さん、面白いんだけどまだ始めたばかりだよ。」

「それもそうね。食事出来てるから降りてらっしゃい。」

そう言われて遼太郎はリビングに降りて昼食を取った。


ゲームに戻り、新たに獲得したスキルを確認する。目潰しは砂を蹴るか指で目を突き暗闇の状態異常を引き起こさせる技、急所突きは相手の急所に対する攻撃力が1.25〜2倍になる、旋風脚は周囲の敵に纏めて攻撃する足技、地裂掌は地面を殴った衝撃で自身から少し離れた敵を攻撃する技、爆裂拳は自身の素早さによって相手に4〜8回攻撃する技だった。バランスの取れた技を習得し、遼太郎は再びモンスターを探して森へと入る。途中ゴブリンと何度か遭遇し、スキルの効果を確認しつつレベリングを行っているがLev3には上がらない。既にゴブリンだけなら30匹程追加で狩ったのだが。そんな事を考えながら森の奥へとやってくると泉があった。その泉の水を飲み、店で買った串焼きを1本食べて休憩していると…

「キャー!」

と悲鳴が聞こえる。遼太郎は仕方なく串焼きを素早く咀嚼すると、声の方へと向かう。すると、女の子が2人、ゴブリンに襲われていた。幼い頃から困っている人は助けなさいとおじいさんから言われていた遼太郎は、一番近くのゴブリンの頭に踵落としを見舞った。

「グギャ!」

と叫んで頭を潰されてゴブリンは消えていく。遼太郎を危険だと判断した残りのゴブリンは遼太郎に襲いかかるが、遼太郎は落ち着いて周りに群がるゴブリンに旋風脚を見舞って沈黙させた。もう敵はいないのを確認して、遼太郎は2人の女の子に声をかけた。

「大丈夫か?」

その言葉に安心をしたのか、それまで震えながら立っていた女の子達はぺたんと女の子座りになる。

「助かりました…」

「あ…有難うございます。」

そう告げてくる女の子2人に、取り敢えず泉で汲んでいた水を渡す。このゲーム、不思議なことに採取すると瓶や縄が自動で出てくる。便利な物ですが、不思議な話ではあります。その水をゆっくりと飲んでいる2人を見ながら、遼太郎は話が出来るまで待つことにした。5分ほど震えていたが、片方が遼太郎に話しかけてきた。

「やっと落ち着きました。助けてくださって有難う御座います。私はリラで、こっちは妹のレラです。」

「そう言えば名乗ってなかったな。遼太郎です。2人は…異国の人ですか?」 

「え?日本人ですけど、キャラメイクでこうしたんですけど…」

「まさか…キャラメイクしなかったんですか?」

「まあ…その…ゲームに詳しくなくて…」

遼太郎の言葉に2人はクスッと笑った。

「皆さんキャラメイクに一日とかかけるんですけど、遼太郎さんはそのままで行ったなんて…」

「ある意味羨ましいですけどね。」

「2人は…双子かな?」

「はい。」

「今日ようやく発売されたので…ずっと前から楽しみにしてたんですけど、操作方法に慣れず…」

「それでもモンスターと戦うためにここまで来たんですが…その…」

「魔法の使い方が解りづらくて…」

「成る程。」

「ねぇ、姉さん。」

「何、レラ?」

「遼太郎さんに教えてもらわない?」

「へ?」

「だって、まだ数時間しか経っていないのにあれだけ動けるんだし、私達より強いんですよ?」

「助けてもらって…更にまだ手伝ってもらうのはちょっと…」

そう話す双子に、遼太郎は少し思考を巡らせる。このゲームのシステム上、パーティを組む必要がある。最大で8人まで組むことが出来、任意で加えたり別れたりも可能だ。流石にこのまま2人を放り出すのも危険だと思うのだが…

「俺、そんなに強くないよ?」

そう言ってみる。するとリラがステータスボードを表示させる。レラも表示させたので、仕方なく遼太郎も表示させると、皆で確認し合う。リラがメイジでレラがプリースト。攻撃魔法が得意なのと回復が得意なのは良いことなのだが、前衛がいないので攻撃が出来なかったらしい。2人共Levは4…遼太郎よりも上だった。そして2人は遼太郎のステータスボードを見て驚いた。まだLevは3だったからだ。だが、ステータスがおかしい…

遼太郎

Lev3

HP 56

MP 38

力 38

素早さ 52

体力 43

Lev1の時15だったHPが3倍以上…これを見てリラもレラも驚いた。

「強すぎませんか…?」

「私達のステータスの4倍以上のものもありますよ!?」

恐らくオールラウンダーの適正だと思われるが…他の人と会話したのも初めてなのでその辺りは解らなかった。

「前衛で牽制して、君達のレベリングの手伝いなら…俺もまだレベル低いし。」

「本当ですか!?」

「是非お願いします!」

「ただ、約束してほしいことがある。」

ポリポリ頬を掻きながら遼太郎は言う。

「歳も近いから敬語を使わないことと、ヤバくなったら俺を置いてでも逃げること。それだけ。」

「見捨てて逃げれませんよ!」

「いや、戦闘不能になるとデメリットが凄いだろう?」

このゲームの死んだ時のデメリットは、所持金の半減と装備品及びアイテムボックス、それに該当するアイテムの中以外の所持品を落とすことである。後者は死んだ場所に戻れば回収出来るが、わざわざ死んだ場所まで戻らなくてはならない。面倒臭そうなシステムではある。遼太郎はアイテムボックスを持っているから、気にならないが、普通のプレイヤーは一部を除けば少し進めなければアイテムボックス等持っていない。遼太郎はそれを危惧して話していた。それに、前衛として時間をかけてあげれば2人は逃げる時間ぐらいは稼げると思ったからだ。

「勿論、戦闘不能まで戦うつもりは無いけどね。」

フフッと遼太郎が笑うのを見て、これ以上の説得は無駄だと判断し、リラとレラも納得した。兎に角これで3人パーティを組み、前衛に遼太郎、中衛にレラ、後衛にリラが付くことになった。

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