第6話① ひとこと余計なお嫁さん 前編


 📞📞お題パート📞📞



「相手によって態度を変えることなく、自分の思ったままをきちんと話せる、これは大事なことですね」


 天使の笑みを浮かべて上役はこう告げた。


「そういうことが自然にできるというのは、その人のキャラクター、持ち味が大事な要素になります」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。


「だからこそ、一歩間違えばそれは『毒舌』と呼ばれることになります」


 相手の気持ちを考えず、その場の空気も考えず、思ったことをそのまま口に出してしまう人がいる。悪意がなければそれは素直さという美徳になるが、度を超すとたちまちそれは毒舌となる。


「一度口から出た言葉は戻すことができません。たとえそれが真実であろうともね」


 わたしは唾を飲み込む。

 いよいよアイツの回収がやってきたのか。

 上役の言葉だけでそれを察する。


 今回の顧客テキはごくごく平凡な中年女性。旦那の実家で義両親と同居し、専業主婦をつとめている。


 愛嬌があって性格も明るいのだが、とにかく義両親との喧嘩が絶えないらしい。

 わたしから見るところ、その原因の一つは彼女の余計なひとことだ。

 

 悪いヤツではないのだが……とにかく口が悪いし、悪いと思ってないからよけいに始末に負えない。

 

 かくしてわたしは憂鬱をずるずると引きずりながら、今日も顧客のもとに足を運ぶ。



 (②へつづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る