第4話① 明るくて傍若無人なギャル 前編


 📞📞お題パート📞📞



「若さというものは、それだけで人を魅力的に見せるものです」


 天使の笑みを浮かべて上役はこう告げた。


「……時に無鉄砲、時に傍若無人、時に天衣無縫、それらは若さのもつ魅力といっていいでしょう」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。


「ですが、そこに自己顕示欲が絡みつくのも若さです。自己を必要以上に目立たせるため、奇抜な行動に出てしまう」


 ああ、それはなんか分かる気がする。

 自分にも思い当たるふしがなくはない。

 思い出したくもない、学生ガキだったときの黒い歴史。

 頭がどうかしていた、としか思えない愚行の数々。


「今回は特に気を付けてくださいね。若い女性はなにかと面倒なものですからね」


 わたしは吐く寸前だった唾を飲み込みつつ、小さくうなずく。

 今回の相手はいわゆるギャルってやつだ。

 子供ではないけど大人でもない、一番厄介な年ごろだ。


「分かっているとは思いますが、相手は未成年だということをくれぐれも忘れずに」


 色恋沙汰になるわけもないが、そもそも互いにコミュケーション不能な存在だ。

 歳の近い人間が周りにいないせいか、女子生徒というだけでもつい身構えてしまう。

 それでなくとも最近の若いヤツの考えていることなどさっぱり分かりゃしねえ。


 かくしてわたしは憂鬱をずるずると引きずりながら、今日も顧客のもとに足を運ぶ。



(その②へつづく)


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