第7話 チーム・ドット

 ターミナルは鎧を身に付け、防御を固めているが、ルルウォンの方は私服に見える……、俺も似たようなものだけど……。

 俺の世界で言えば、『パーカー』に近いのか? チャックはなく、道着の帯のようなもので、はだけないように締めている。


 隙間から見える谷間は、彼女の『子供っぽい性格だけどきちんと体は大人』という部分が見えていて……。背の高さと、ターミナルよりも顔立ちはお姉さんなので、年は離れているのかもしれない……、高校生くらいか。まさか大学生じゃないよな?


「ドットぉ……、さっきからじろじろ見て、なんか用なのー?」


 爆発音を辿り、流れていた滝の裏の穴から先を進んでいる……。真っ暗な洞窟の中だったが、光を放つトレジャーアイテムと夜目が利くターミナルの目で、視界を確保している。

 それでも暗い部分はあるので、死角からの襲撃には対応できない。


「いや、別に……」


 尻尾でも生えてそうに飛び跳ねて、俺の肩に両手を置いたルルウォン。

 顎を俺の頭に乗せ……、重たい……。


「不調って聞いてたけど、いつも通りだねー。その塩対応、ひどいと思うけどー」

「されたくなければ、こんな風に寄りかかってくるな」


 注意をしてもやめないルルウォンは、肩に乗せていた手を脇の下に――。

「はう!?」とくすぐったさに声を出したら、あっという間に持ち上げられた。

 そのままルルウォンの肩に座らされる……、懐かしの肩車である。


「…………なにしてんだ」

「寄りかかるのはダメなんでしょ?」

「だからってなんで肩車を……まあいいや、楽だし」

「ふふん、そうやってなんでも受け入れてくれるドットは好き!」


 諦めただけなんじゃないかな……? 今の俺みたいに、『ドット』も、注意をしても直らないから、その都度、言うくらいなら自由にさせておいた方がいいと思って……。

 ドットの体に魂が入っても、彼を演じる必要はなさそうだ。


 ターミナルは俺の言うこと為すことに否定をしないし、怪しんでも追及する気はなさそうだ。ルルウォンを相手にすれば、俺とドットの反応はほとんど同じだし……、下手に取り繕う方が、違和感を与えてしまうことになる。


 ルルウォンが違和感に気付けるか? と思えば、思っても気にしない気もするけど。


「ルルウォン、足下に気を付けろ」


 先行するターミナルがアドバイスをしてくれたが、


「うん? うん、分か、」


 ガッ、と足下で音。

 短いパンツから伸びた少し筋肉質の生足……じゃなく、足首が窪みにハマった。

 当然、バランスを崩したルルウォンが前に倒れ、肩車をされていた俺も投げ出され――


「うわちょっ、離せバカ!」


 ぎゅっと俺の足を握り締めるルルウォンのせいで、受け身を取ろうと転がることもできない。

 空いた両手で地面を待つが、急に加速したせいでタイミングがずれる。

 ……両手をついても意味がなかった。

 地面に強く額を打ち、痛みで動けない……っ。

 後ろでは受け身どころか両手をつくこともしなかった(だって俺の両足を頑なに掴んでいるからだ!)ルルウォンが、同じように額を打って地面を転がっている。


「……なにをしているんだ、マスターと……バカが」

「た、ターミナル……いつからあたしのことを、マスターと思ってたのかな……いたた」

「お前がバカの方だ、バカ」


 うぅ、と痛みで額を押さえる俺に「大丈夫か、マスター」と言ってくれるターミナル。

 優しく手をどかし、髪を上げて額を診てくれる……。


「氷で冷やしておこう……、トレジャーアイテムを使うが、いいか?」

「……いいけど……なんでもできるんだな……」

「トレジャーアイテムに依存しているのも良くはないがな……。マスターが日頃から言っていることだろう? ……世界にもっと資源があればいいのだがな……ないもねだりをしても仕方がない」


 トレジャーアイテムによって氷が作られた。

 少量の氷を布で包めて、額に当てる。

 数分、当て続けておけば痛みも引くだろう。


「あれ? あたしの分は?」

「あるわけないだろう」


 氷だけに、冷たい対応だった。

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