第六章 表彰式

表彰式の時間が、刻々と近づいていた。


ブラックは、取りあえず楽屋に戻ってみたが、ポランスキーも、包帯男の姿も、そこにはなかった。


しかし、なぜかそこには自分を入れて10人の演者らしき人物がいた。


釈然としない中、11:30となり、表彰式が始まった。

「では、まず初めに特別賞を発表します。特別賞は…」


ドラムロールが鳴り響き、スポットライトが10人の演者の顔を往復して行く。


「エントリーナンバー9番。 ロバート・ブレード君!」


ジャーンという音とともに歓声が沸き上がった。


少々ふらつきながらも一度立ち上がったロバートだったが、「本当に俺が…」と言うのが精一杯で、思わずそこにしゃがみこんだ。


「おめでとう。」


そう主催者に言われて、渡された賞状を、付き添いに支えられながらも、なんとか受け取ると、演者たちの並んでいる列に戻った。


「続きましては、世界大会の出場権が得られる第三位の発表と言いたいところですがその前に、次点の四位を発表します…。ブラックさんです」


「俺?やったね」


ブラックは喜んだが、余韻に浸る間を与えず、主催者は続けた。


「今度こそ第三位の発表です。第三位は…


再び、ドラムロールが流れ出し、スポットライトが動き出した。


今度は、音が止まった後、場内は一瞬静寂に包まれた。



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