第一章 視聴率
この国では、芸術家を目指す者が多い一方で、家でテレビを見ることを楽しみにしている者も多かった。
そんなある日、第1地区から来たという、聞いたこともない有線テレビの営業マンを名乗る者が二人、この地区へやってきた。
普通のよくある勧誘と同様に、契約の最初の1ヵ月は無料という触れ込みだった。
しかし、変わっているのは、それ以降続けて見た場合の契約条件のことで、もし見続けたければ、その家の住人全員の小指を1本づつ差し出せという恐ろしいものであった。
俺は、そんな条件誰も呑むわけがないと、最初は思っていたのだが……。
何故かそいつらが来てからまだ二ヵ月も経っていないにも関わらず、視聴率90%、この街の80%以上がこいつらと契約し、自分の小指を切り、渡したという。
今では、指のない人々は、義手ならぬ義指をしていて、数少ない指のある者は肩身の狭い思いをしている。
そればかりではない。
時折、指のあるやつが羨ましくなるのか、小指狩りと称して、指のある人の小指を切ろうとする者まで現われてきた。
俺は、自分の身を(小指を?)守るため、知り合いに俺用の義指を作ってもらい、常にそれを嵌めているようにしていた。
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