「五歳」つぎラノノミネート感謝!小劇場

「フェリス様、フェリス様、大変です!」


「どうしたの、レティシア? 髪に薔薇の花びらがついてるよ」


「は! お庭から走って来ましたので! 凄いのです、フェリス様! ノミネートです!」


「ノミネート?」


と尋ね返しながら、レティシアの金髪から薔薇の花びらや葉っぱをとるフェリス。


「はい! なんと、皆様のおかげで、私達の物語、五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました! が、つぎラノにノミネートされました!」


「つぎ、らの? それにしてもこのタイトル、どうなんだろうね、僕達の物語……」


「読んだままで、謎が一ミリもないですね!  いえ、タイトルのお話ではなくて、つぎラノです! つぎラノ! 」


つぎラノにレティシアがきゃっきゃっしてるので、何か嬉しいことらしい、と察するフェリス。


「つぎらの とはどういう意味なんだい?」


「次に来るライトノベルです!」


「次に来るライトノベル……いつか訪れる、光輝く小説……?」


「えっと光り輝くではなくて、ライトノベルは……うーん、どういう意味なのかしら? 身近なお話?」


「五歳の少女が邪神似の引き籠り王子に嫁がされるのは、それほど身近な物語ではないのでは?」


「めっ、フェリス様、竜王陛下は邪神じゃありません、しょっちゅうあちこち魔法で飛んで行ってしまわれる私のフェリス様は引き籠りじゃありませんから……」


「そうかな? こっそり夜の間に魔法で行けば、実際には行ってないことになって、僕はずっと引き籠ってることに……」


「なりませんよ」


こん、と、レティシアは美貌の王子様に額を寄せる。


「ライトノベルというのは……、そうですね、なかなか実際には勝てないこともある正義がちゃんと勝てるような……前世の……私のような庶民の娘や少年や大人の傍らにいてくれる小説なのです。そういうお話を読んで大人になりました」


「ではやはり光の物語だ。闇の物語ではなくて」


「う、ううん、そうなのかしら? 何だかフェリス様がその美貌で、光の物語とか仰ると、創生神話みたいに聞こえてしまって……」


「そんなことはない。僕はわりと何でも読むよ。引き籠りの本好きだからね。字の書いてあるものは何でも読みたくなる。レティシアのことが書いてあったら、もっと読みたくなるね」


「と、とにかく、その次に来るライトノベルを選ぶ賞に、読者の皆様が、私達の物語を推薦して下さったのです! もちろん、我が推しのフェリス様が素敵だからです!」


「いや? もちろん、うちのレティシアが可愛いからだよね?」


誰に向かってかわからないが、世に同意を求めるフェリス。


「御推薦頂いて、お名前をあげて頂きまして、これから12月5日まで投票期間なのです! 皆様、ぜひぜひ我が推しフェリス様に投票頂ければと!」


「レティシア。個人に投票するのではないみたいだよ。皆様、よろしければ、我が家の可愛い姫君が頑張る、五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました、に皆様の尊き一票頂けると大変幸甚に存じます」


「よろしくお願いいたします! 皆様、最初からずっとの方も、書籍からの方も、コミカライズからの方も、最近カクヨムからの方も、本当に応援ありがとうございます!」


レティシアが喜ぶので、薔薇の花がそこかしこでぽんぽん開き出して、フェリスの微笑を誘った。


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