ディアナの騎士達
「フェリス様。シュヴァリエではいかがお過ごしですか? レティシア姫は薔薇祭を楽しんでおいでですか? 我らはフェリス様なき王宮で大変寂しく働いておりますが……」
「僕がいなくて寂しいなどということはないだろうが、急に休んで迷惑をかけてすまないね、アルノー」
夕食の後、フェリスは空間を繋げて、王宮にいるアルノーと話していた。
「いえ、それについては、フェリス様を婚姻直前まで働かすのはどうなんだ? と話してもいたので、婚礼休暇に入って頂いて当然なのですが……そちらはいかがですか? レティシア姫と御二人で寛げてますか?」
「う……ん」
寛げてるかどうかというと、突然、サリアから花嫁交換しろなどと言われて、全く寛げてない。
憔悴したレティシアが可哀想だし、フェリスもうっかり邪神化しそうになるので、おかしなことは言ってこないで欲しい。
「サリアから花嫁交換の希望があったと……」
「情報が制御されてない?」
おや、とフェリスは描いたような眉を上げる。
義母上はサリアの花嫁交換の申し出をとりあわず、却下したと言うが、やはり話は漏れるのか。
「いえ。表の話になってる訳ではないです。単に我々が愛する上司のフェリス様の御話なので気になっただけで」
まあ、王弟殿下の花嫁は五歳! と皆驚いたのに、その上さらに花嫁が交換などになったら、誰でも驚く。
「では皆に伝えておくれ。不愉快なサリアの占いの誤りだと。誰とも替わったりしない。レティシアが僕の花嫁だと」
レティシアを誰かに奪われるなんて、もうフェリスには到底受け入れられない。
「フェリス様とレティシア姫はご一緒にいらっしゃる姿がとても自然でしたので、それをお伺いできて安心いたしました」
「そんな風に見えたか?」
「はい。まるでずっと一緒にお育ちになったご兄妹のようだなと。不思議なくらいに。……竜王陛下がお選びになる御相手とはそういうものなのかもしれませんね」
「レーヴェが選んだかどうかはわからないが」
相手が罪のない騎士アルノーなのに、レーヴェの話が出てくると、無駄ににぎやかな御先祖を思い出して、フェリスは笑ってしまいそうになっていけない。
「いえきっと竜王陛下がフェリス様の為に特別な姫をお選び下さったんですよ。レティシア様はいまもお可愛らしいですが、成長なさったらそれはもう美しい姫におなりになるでしょうし」
「うん。そうだね。美しくなるだろうね、レティシアは」
アルノーの言葉に、躊躇いなくフェリスは頷いた。
いまもとても可愛らしいのだが、レティシアは大きくなったらさぞ美人になるだろうな、と自然に想う。
レティシア本人は、サリアで不気味な姫扱いされてしまったせいか、自分がとても可愛い姫の自覚が全くないらしく「私は可愛らしくはありませんが、強運が取柄ですから、きっと私がフェリス様をお守りします!」と出逢った日から可憐にも勇ましい。
レティシアは可愛くておもしろい。
フェリスにとって、レティシアと過ごす日々は常に飽きない。
次に何を言いだすのか何を始めるのか、まったく想定できない小さなびっくり箱だ。
くまのぬいぐるみとレティシアの身には大きなバスケットを抱えて、フェリス様にごはんを食べさせるのだ! と夜中に進軍してくるレティシア以上に自分を驚かす姫にフェリスは逢ったことがない。
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