薔薇の姫は、推しの名の薔薇を望む

「レティシア、今日は肩の凝る手紙ばかり書いて疲れたろう?」


「いいえ、ちっともです!」


 ホントはちょっと肩凝ったけど、フェリス様のお兄様とお義母様にお手紙書いて疲れ果てました、て、フェリス様に言うのはなんかひどくない? 


 ディアナの国母と国王陛下だから、気軽に御手紙書ける人は少ないだろうけども。


「義母上はともかく、兄上はレティシアからの手紙をきっと喜んでくれるよ」


「はい!ポーラ王妃様やルーファス様にも、薔薇の贈り物たち、喜んで頂けるといいなあって」


「もちろん。姉上はシュヴァリエの製品はお気に入りだし、ルーファスもレティシアからの贈り物をきっと喜ぶよ」


 フェリス様と二人で、贈り物の数々を選ぶのも楽しかったの。


 ルーファス様はきっと、僕も薔薇祭に行きたい!て仰るわね、とか思いながら。


「便箋の薔薇と竜の紋章、素敵ですね、フェリス様」


「ああ。シュヴァリエの領主になったときに、僕の紋章として考案したんだよね。そのときは、僕とシュヴァリエの薔薇、くらいしか考えてなかったけど……」


「フェリス様がデザインされたのですか?」


「こんなかんじのものを、て僕がお願いして、本職に作って頂いた。でも、いま見ると、僕を象った竜が薔薇の姫のレティシアに巻き付いてるみたいで、仲良しで可愛いね」


「はい!私も薔薇と竜が仲良しで可愛いなって……」


 フェリス様と二人で手を繋いで、夕食に行こうと回廊を歩きながら、一日にあったことをお話してると楽しいし、なんか落ち着く。


  ちょっと、夫婦っぽい? 家族っぽい?


「結婚の御祝いに、レティシアという名の薔薇も作りたいな」


「薔薇を? いえ、そんなのはもったいないですが、フェリスと言う名の薔薇はありますか? もしあったら、私、その薔薇を髪に飾ったり、花嫁のブーケにしたりしたいです」


 いつのまにか、フェリス様との結婚式のことを、とっても楽しく考えられるようになった。


 大きくなりたい!なんて我儘もお願いしてしまった。


 叶っても叶わなくても、そんな我儘が言えるくらい、フェリス様に家族として甘えられるのが嬉しい。


 ディアナに来るときは、ただの儀礼的な儀式と想ってたけど、フェリス様との結婚式なら、うんと楽しく、うんと思い出に残るものにしたい。


「いや、その名の薔薇を作りたいって言われてるけど、恥ずかしいから許可してない。レティシアとお揃いで作るなら、作ってもいいかも」


「フェリス様の薔薇欲しいです!」


 自分の名前の薔薇は滅相もないって想うんだけど、フェリス様の薔薇は欲しい!


 推しグッズ(何か間違っている……)!


 うう。 フェリス様の名を冠した薔薇が欲しい欲望に勝てない。


「それは喜ばれますよ。ずっと皆、フェリス様の薔薇を作りたがってましたし。何よりも、美しい御領主夫妻の名を冠した薔薇は売れますよ」


「レイが現実的だ。そうだね、では、婚姻祝いに、二人の名の薔薇を育てて貰って、我が地の経済に貢献しようか、レティシア」


「きゃー!フェリス様の薔薇!」


 そしたら、フェリス様の薔薇、レティシアのお部屋のあたりに植えて欲しいなー。


 わくわくわくわく。

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