推し活の奨め

「うにゃー疲れたー」


 王太后様とマリウス陛下に御手紙を書いて、贈り物を悩んでたら、レティシアの一日が終わってしまった……。


 ちょっとシュヴァリエの奥方、薔薇の姫見習いっぽい一日かしら?


「お疲れさまでした、レティシア様。初めてのお手紙、きっと陛下にも、王太后様にも喜んで頂けますよ」


「そうだといいな……」


 保証してくれるレイの言葉に、ちょっと癒される。


 王太后様はわかんないけど、優しそうなマリウス陛下は喜んで下さるといいなー。


「今日のフェリス様の御仕事、邪魔しちゃったかも」


 王太后様には何が失礼にあたるかしら? と魘されそうになるレティシアの為に、義母上の好みだと……とフェリス様が付き合って下さった。


 レターセットも、公式用のシュヴァリエの薄紅の薔薇と碧い竜の紋が入ったもの、私的な御手紙用、といろいろ出して下さった。


 薔薇のシュヴァリエなので薔薇と、水を司る竜神を祖とするディアナ王家の御子のフェリス様のイメージで、薔薇に絡まる竜の紋章のレターセットなの!


 かっこいいの!


 そして、レティシアのお隣で御手紙を一緒に書いてくれるフェリス様、とっても『萌え』だったのー!


 『萌え』ってこういうときに使うのね! とレティシアは推し活を満喫していた。


 マグダレーナ王太后様とフェリス様は御仲はよくないんだけど(逆にそのせいなのか)、フェリス様は王太后様によくお手紙とか書くから、王太后様の好みは一通り把握してるんだって。


 好みは把握してても、気に入っては貰えないけどね、と苦笑していた。


「よろしいんですよ。レティシア様が何か誘って下さらないと、我が主は、婚礼支度の休暇と言いつつ、いつものように仕事を始めてしまいますからね」


 大変けっこうです、とレイはにこにこしている。


「私も、フェリス様は働き過ぎです、お休みしなきゃダメです、て言ったら、笑ってらっしゃったわ」


 何と言うか、フェリス様、隙あらば、息をするように仕事しようとなさるのよ。


 ぜったい日本人に向いてると想うわ、フェリス様、あの性格(美貌の王子の外見はともかく)。


「はい。私共もずっと申し上げておりますが、なかなか……。ですが、レティシア様は、婚約者、そして奥方となられますから、ぜひフェリス様をお休み好きの夫君に育てなおしてください」


「レイったら。そんなこと出来ないけど、遊びのお誘いはたくさんしますね!」


 ふふっとレティシアは笑った。


 真剣にレティシアと一緒に遊んでくれるフェリス様は可愛い。


 というか、フェリス様、あんまり、だらだらとか、やる気なくのモードがないらしく、何でも真面目でいらっしゃるの。


 砂の御城もいちご摘みも、他愛ない遊びも、手抜きなく取り組んで下さる。


 あ、サイファとシルクとフェリス様で遠乗りとかも一緒に行きたいな。


 レティシアはサイファには乗れるんだけど、さすがに長距離とかはあまり乗ったことないので。


 一緒にも乗りたいけど、フェリス様が華麗に馬操ってるとこも眺めたいなー。


 きっと、凄くかっこいいと想うの。


 常に、うちの推しのフェリス様はかっこいいんだけど。

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